先日も『ガジェット通信』でお伝えいたしました『非営利法人 万年野党』の設立について、詳しくお話を伺ってまいりました。その内容についての全文を書き起こしでご紹介いたします。
●書き起こし
記者:先日2013年7月3日に発表された『非営利法人 万年野党』の設立について、理事をしていらっしゃいます慶應義塾大学院教授の岸博幸さんにお話を伺ってまいりたいと思います。
まずはこの、とっても耳慣れない『万年野党』というネーミングなのですが、どういった経緯でこの名前になったのかをお伺いしたいのですが。
岸氏:ひと言でいえば「やりたい活動を一番端的にあらわしている名前が『万年野党』だな」ということで、関係者間の協議でこの名前になりました。つまり、今の政策・政府をめぐる問題を考えた場合に、一番の問題はこの「政府とか政策をしっかり“外部が監視”をしないといけない」で、その本来の役目は、メディアが果たすべきなので実際、アメリカではメディアの役割は“ウォッチドッグ”つまり権力の監視という意味があるのですが、日本のマスメディアはその役割を果たしていない。
そしてもう1つ大事な政治の側、『野党』が、やはりそういう役目を果たすべきなのですが、これも残念ながら権力闘争ばかりで政府や政策の“権力者”の監督というのはやっていないと。そういう、アメリカ的には“ウォッチドッグ”の役目を担う組織は日本には無いので、それを「この『万年野党』という組織でやっていこう」という、そういう気持ちがこの言葉(『万年野党』)に現れているのです。
記者:(仮称)となっているのですが、現在は正式な名前について何か案はでていらっしゃいますか?
岸氏:当然いろいろな議論はあります。それは、『政策監視会議』という堅い名前もありますし、ほかにもいろいろと候補があるのですが、少なくとも私はこの『万年野党』という言葉が一番この組織の活動目標を端的にあらわしているのではないのかな、と。
『万年野党』つまり「与党になって権限が欲しい」とか、そういう訳ではないと。常に監視をして文句を付けていくのだと。間違ったことを直すのだ、という気持ちが込めてありますので、そういう意味では個人的に『万年野党』という名前が一番使われるべきなのかな、と、思っております。
記者:メンバーの方々なのですが、かなりいろいろと有名な方々が集まってらっしゃるのですが、どのように集まったのですか?
岸氏:これ(『万年野党』)をやろうという声がけをする過程で、この趣旨に賛同してくれた人がこのメンバー「会長(田原総一朗氏)」「理事長(宮内義彦氏)」「アドバイザリーボード(草刈隆郎氏)(竹中平蔵氏)(冨山和彦氏)」に入ってくれていますけれども、結果的にいわゆる今までの政策の議論において一番の“改革派”呼ばれた人ばかりになっていますよね。
会長が田原総一朗さんですから、この人は今までマスメディアの中でも一番権力の監視「権力にケンカを売る」ということをやってきましたので、そういった意味では『万年野党』というこの名前を一番“体現した人・している人”ではないかと思いますし、更に言えば理事長のオリックスの宮内会長、この方はまさに『小泉(内閣)時代』規制改革会議を通じて、この日本の権力に対して問題定義してきた方ですね。
他のアドバイザリーポードも、草刈さんこの方は宮内さんのあと、規制改革会議の議長をやられていますし、竹中平蔵これはもうご存知ですよね、『小泉・構造改革』で『既得権益』に切り込んだ人間。で、高橋洋一、これは「財務省にずっとケンカを売っている人間」。冨山和彦、この人はかつて『産業再生機構』というところで、カネボウやダイエーの再生をして、ある意味では「役所と闘って」ダイエーを再生するときには「経済産業省と闘ってきた人間」そういう、まさにこれまで権力と闘ってきた人間ばかりが集まっていますので『万年野党』に相応しいメンバーではないかと思います。
記者:先ほども少しお話があったのですが、“政権を取ることに拘っている野党”についてどのようにお考えになっているか伺ってよろしいでしょうか?
岸氏:なんといいますか、本来、野党というのは大事な役割があるのですよね。それは与党、つまり政府の側に入った政治家が、結果的に“権力の側ゆえの『既得権益』的な行為をする”これを本来は「牽制する」「問題を指摘する」「正しい方向性を言う」のが野党の役割なのですけれど、まあ、残念ながら今の民主党が典型例で、そもそも民主党は政権を持っている間も何も大したことはしていませんでしたが、野党に転落して“本来その反省・及び与党時代の経験を踏まえて”正しい主張・行動をすべきなのに結局“権力闘争”ばかりで、このまえの国会でも『電気事業改正法案』『発送電分離』などの大事な内容、民主党が言っていた内容も入っている。でも結局それを、“政争”を優先して、「総理の問責決議」を出すのを優先してしまって、「大事な法案を潰してしまう」こういうダメな野党は本来の“野党たるファンクション”を果たしていませんから、「こういう“ダメ野党”が政治の世界にいるからこそ、外部の民間で“民間の野党”『万年野党』がしっかりとした活動をするのが大事ではないか」と思っております。
記者:『アベノミクス』についてなのですが、現在の評価を点数で言うと何点くらいになりますか?
岸氏:点数で言えば、『三本の矢』というのがありますが、簡単に言えば最初の「金融緩和」一本目が100点満点で、二本目の「財政出動」が70点と、2つとも合格点。で「成長戦略」が40点まあ、これは落第点です。そういう意味で全体を通して言えば、今のところ50点くらいボーダーラインぎりぎりで「成長戦略」に関して追試、つまり秋から「成長戦略の第2段」がありますので、これでどれだけ「ちゃんとした合格点」がとれるかで、『アベノミクス』の評価というのが決まるのかな、と思っています。
記者:どのような努力が必要だと思われますか?
岸氏:これは簡単で、そもそも『アベノミクス』の『三本の矢』のうち、「金融緩和」「財政出動」は短期的に“デフレ” 低成長から脱却するための政策。でもそれは「所詮短期間しか続かない」し「何よりも実体経済は何も強化しない」そういう意味でこの『アベノミクス』というのは三本目の「成長戦略」が一番大事なのです。
じゃあ、その「成長戦略」で「民間の産業や企業の競争力を強化できるか」これは「成長戦略」の中身が、いわゆる『構造改革路線』になるのか、または役所がやりたい『産業政策路線』になるのか、これで大部ちがってくる。当たり前の話で政府のお金を頼るような企業が、グローバルで勝てるはずがありませんから、本来は『構造改革路線』つまり『規制改革』や
『地方分権』『自由貿易』というのをしっかりとやらなくてはいけない。
でも6月に発表された「成長戦略」では、それは『国家戦略特区』とか“一部分以外”ほとんど入っていない。選挙前ということで先送りにされて『構造改革』よりも『産業政策』で「政府がお金をあげて、政府が成長分野も決めてあげる」という非常に“過保護な政策”になったわけで「これで民家の産業が強くなるはずがない」と。
逆に選挙が終わったあと、秋からの「成長戦略第2段」で今度は選挙は当分ないのだから、じゃあ『既得権益』に切り込むと、そして“岩盤規制”もちゃんと改革していくようなしっかりした『構造改革路線』をとれるかどうか、それにかかっている。まあ、一番の試金石は『法人税減税』が、法人税・本旨の減税になるのか、または『設備投資減税』になるのか『法人税減税』ならば「税制という経済の背骨を変える」わけですから『構造改革』になるのですね。
これが『設備投資減税』だと、結局どの設備が対象になるのかということで役所・経済産業省が関与できるようになる。まあ、「産業政策にすぎない」わけでして、秋はこの意味で「『法人税減税』までいくのか」「『設備投資減税』で留まってしまうのか」「その延長でしっかり“岩盤規制”に切り込めるのか」こういった点が一番注目すべきで、これができなかったら「『アベノミクス』は失敗」に終わりますし、連立政権も残念ながらあまり高い評価はできないということになると思います。
記者:「地方自治体も監視する」ということで「ここは確実に自分たちで変えていきたい」というところがありましたら伺いたいのですが。
岸氏:ある意味で、政府以上に地方自治体は問題が多く、本当はこの地方自治体や首長というのは“権力者”ですから、これもちゃんと監視しないといけない。本当は「日本ではローカルメディアがその役割(“権力者の監視”)を担うべき」で、実際に「アメリカではローカルメディアが、地元の州のトップであるとか、州議会の議員の活動を監視している」そういった“ウォッチドッグ”の機能が、きちんとあるのですが、日本は残念ながらローカルメディアも全くそういった機能を果たしていないのです。そういう意味で言えば、国・中央政府の各役所は政治家以上に「バカな規制などをどんどん増やしたがる」ので当然これは監視しなくてはいけない。それに加えて地方自治体・自治体の首長、あとは地方議会の議員の活動に関しても今後はこの「『万年野党』の活動を拡大するなかで、対象を広げていかなければいけない」と思っています。
記者:そういったことも踏まえまして「これだけは世間やマスコミに是非伝えておきたい」ということがございましたら、お伺いしたいのですが。
岸氏:ひとことで言えば安倍政権になって、以外と株価が上がっていることなどで皆、油断しているようですが現実には「さまざまな規制強化」であるとか「行政改革の遅れ」が明確になりつつあります。残念ながら民主党政権時代に注目していたのが、安倍政権になって「“株価が上がったことだけ”で(規制改革や行政改革の遅れなどを)忘れちゃった感じがある」でも水面下では政府は「どんどん規制を強化している部分」があるし「行政改革・公務員制度改革も全く進んでいない」こういう部分をしっかりやらないと「本当の意味での日本経済の再生」などは難しいので、少しでも多くの人に、こういった部分に注目して欲しいし「『万年野党』としても訴え続けたいな」と思っております。
もう1つ大事なのは『万年野党』のような組織を“民間”立ち上げないといけないくらい「今の政治の世界はだらしがない!民主党を筆頭に!」これは政治家の方々に深く反省をして欲しいと思います。
記者:それは今現在、(『万年野党』の)活動として訴え続けていらっしゃるのですか?
岸氏:まさに、できたばっかりでして活動の本格化はこれかですので、このアドバイザリーボードのメンバーを含めて議論しながら活動の方向を決めていこうと思っているのですけれども、ある意味『万年野党』は「国民・民(たみ)の側にたった組織」ですので「こういった活動をしよう」とか「こういった問題があるから、そこを突っ込め」とか、「世の方々からもどんどんそういう提言などをいただいて活動をひろげていきたいな」「同士も増やしていきたいな」というふうに思っております。
記者:例えば、こちらご覧になった方が「お願いしたいこと」があった場合どのような形で連絡をとればよいのでしょうか?
岸氏:今後この『万年野党』で、具体的な計画は全部決まっていませんけれど、当然『ホームページ』を作ることになると思いますし、連絡先も明確になりますから「メールなどでどんどん、言い方は悪いですが“提言”」などいただければ、または「問題指摘」または「いいつけ」を貰えれば、それで活動をひろげていきたいと思います。
記者:活動について本格化する時期ですとか、目処はいつぐらいになっていますか?
岸氏:なるベく早く始めたいです。選挙が終わりまして秋からまた『臨時国会』も始まり、ここで「成長戦略第2段」の議論が始まります。あとは多分9月に『内閣改造』もあると思いますから、そういった意味で秋の『臨時国会』のタイミングから「完全に活動を本格化」して、いわゆる日本の社会での“ウォッチドッグ”としての機能を果たしていきたいと思います。
記者:運営費についてなのですが、どのような形で集めてらっしゃるのですか?
岸氏:それが難しいのですよ。こういったNPO法人て、必ず資金問題が大変でして一番楽な方法は、やはり企業や特定のところから「ドカンと補助金を貰うこと」なのですけれども、それをやってしまうと結局一部のその“お金を出してくれたところ”の『既得権益』は批判できませんから、やはりそういったことはできないと。
従って、この『万年野党』は方針としまして「ひろくうすく、多くの人から集める」会員を募りまして、一口5千円くらいで出していただいて、要は「どの『既得権益』にも媚びないで済むように」逆に言えば「ひろくうすく集めることで活動を賄っていきたい」と思っておりますので、後ほど一口5千円を宜しくお願いします。
記者:今回、設立ということなのですが実は以前から活動をはじめていらしたということなのですが、どういった活動をしていたのでしょう?
岸氏:『万年野党』の前身、任意団体みたいな『政策監視会議』というのをやっていまして、ここではちょうど参議院選挙があったものでして、参議院選挙に向けて「有権者がちゃんと正しい判断をできるよう判断材料に」ということで『参議院議員』の国会の質問を“政策の専門家”で評価をしてその結果をまとめています。
その結果をまとめたものを『国会議員三ツ星データブック』*1という形で出版もしています。これを見ると「国会でどれだけちゃんと質問なり、議員立法を提出したか」とかはないですが、ちゃんとその参議院の議員を“3つ星・2つ星・1つ星”と区分もしております。参議院選に向けてこういった資料もつくって公表しておりますので、要はこの『万年野党』の前身がつくったものでありますけれども『万年野党』でもこういった活動をどんどん拡大していきたいと思っております。
記者:ありがとうございました。
岸博幸『Wikipedia』http://ja.wikipedia.org/wiki/岸博幸
*1:「国会議員三ツ星データブック【2013年参議院選挙版質問王ランキング】[Kindle版]」 『東京プレスクラブ』Amazonhttp://amzn.to/16DC5GE
●参考
「【発表】「特定非営利活動法人万年野党(政策監視会議)」(仮称)の設立について(2013年7月3日)」『ガジェット通信』http://getnews.jp/archives/373221
「特定非営利活動法人 万年野党 法人申請用資料一式」『特定非営利活動法人 万年野党』http://bit.ly/13dLE1b
田原総一朗『Wikipedia』http://ja.wikipedia.org/wiki/田原総一朗
宮内義彦『Wikipedia』http://ja.wikipedia.org/wiki/宮内義彦
草刈隆郎『Wikipedia』http://ja.wikipedia.org/wiki/草刈隆郎
竹中平蔵『Wikipedia』http://ja.wikipedia.org/wiki/竹中平蔵
冨山和彦『Wikipedia』http://ja.wikipedia.org/wiki/冨山和彦
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