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「細かすぎて伝わらない」では困る、ネット選挙解禁法案

2013/03/09 20:02 投稿

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「細かすぎて伝わらない」では困る、ネット選挙解禁法案

今回は谷本晴樹さんのブログ『log and memo』からご寄稿いただきました。

■「細かすぎて伝わらない」では困る、ネット選挙解禁法案
与党、野党ともに国会に公職選挙法改正案を提出した。
与党案には日本維新の会、生活の党、社民党なども同調している。衆参で過半数になるので、ひょっとするとすんなり与党案が通ってしまうかもしれない。しかしその与党案の細部をみると、何を意味するのかよく分からないところや、候補者や有権者の間に誤解を生みそうなところがある。かつて、テレビで「細かすぎて伝わらない…」などというコントがあったように記憶しているが、選挙で「細かいところ」で引っかかって、公職選挙法違反になってしまっては、笑い話では済まなされない。そうならないように、与野党でしっかり審議し、細部まで詰めて欲しい。
一見、細かい点なので、あまりメディアでも注目されていないが、そのまま放置すると「思わぬ落とし穴」になりかねない点を、今回は3点挙げたい。特に3については、おそらく当の法案に関わる議員ですら、よく分かっていない点だと思うので、しっかり審議してほしい。

●1.「この人いいね!」はダメだけど「この人ダメだね!」は良い??
例えば選挙運動用メールである。「第三者」である有権者は、選挙運動用メールを送ることができないことになっている。一有権者が友人に「この候補者良いよ!投票して!」として送ってしまうと、公職選挙法違反に問われる可能性がある。が、実は落選活動(当選を得させないための活動)用のメールだったら送ることができるのである(改正案第142条の5)。つまり「この人いいよ当選させよう」はダメなのであるが、「この人だめだよ落選させよう」はオッケーなのである(ただし、メールアドレス及び氏名又は名称を正しく表示させなければならない)。これが本当に整合的なのかわからないが、メールで選挙に関する話題は一切ダメなんじゃないかと思っている有権者も多いのではないだろうか。メールだけの話ではないが、ネット上の政治議論が委縮しないように、ダメな場合をしっかりと説明しなければならないだろう。

●2.「まぐまぐ!」などをつかって、選挙運動用メール配信はダメ?
候補者が一番やってしまいそうな落とし穴は、「まぐまぐ!」のようなメール配信代行業者を通じての選挙運動用メールを配信してしまうことである。与党案では、電子メールは送信者「本人」に運動用電子メールを求める人に対してしか、送ることが許されていない。したがって、「まぐまぐ!」のようなメール配信システムでは、直接候補者本人に申し込んでいるわけではなく、業者は電子メールを受信を希望する者に対して機械的に電子メールを送信しているに過ぎないので、おそらくはダメになるだろう。この点も、はっきりとさせて、周知徹底しないといけないだろう。

●3.なぜ「バナー広告だけ可」なのか議論を。
与党案では、政党のみ「バナー広告」が認められることになった。しかしその理由が、聞けば聞くほどよく分からない。この法案に関係する議員の中にも、実は「バナー広告」自体、よく分かっていない人がいるかもしれない。例えばある議員は、リターゲティング広告(Cookie情報を元に、一度広告主サイトを表示したことのあるユーザーに再度、訪問を促す手法)などいろんな広告があるので、それを規制したいと言っていた。しかしこれは意味不明と言わざるを得ない。バナー広告のみ認めるという事は、そうしたターゲティング広告を規制することに繋がらない。例えば有名検索サイトの「バナー広告」は利用者の検索履歴、あるいは住んでいるエリアから、ターゲットごとにバナー広告を行っているからである。
さらに、なぜバナーはよくてテキストはダメなのか、その理由もよく分からない。おそらくその趣旨は、広告とそうでないものをはっきりさせたいということだろう。であれば、アメリカの州の多くが、「paid political advertisement(有料政治広告)」ときちんと表示させる義務を負わせているように(中には広告金額まで公表する義務を課しているところもある)、広告であるという表示義務を負わせればいいということではないか。

インターネット選挙解禁法案をめぐる、与野党の違いは、有権者に選挙運動用メールの送信を認めるか否かばかりが注目されがちであるが、その裏で大切な論点が見過ごされているように思う。もちろん、インターネット選挙解禁は早期に実現してほしい。しかし「拙速な審議」だけは避けてほしい。すべての有権者が当事者となるのが公職選挙法である。迅速でありながらも丁寧な国会審議を期待したい。

執筆:この記事は谷本晴樹さんのブログ『log and memo』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年03月07日時点のものです。

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