北川景子主演で7月から9月にかけて日本テレビ系で放送された『家売るオンナ』(全10話)の視聴率は高かったようだ。リオ五輪・卓球準決勝「福原愛×李暁霞戦」とぶつかった第5話(8月10日)を除き、2桁をキープ(次図)。
「刑事」や「医者」といった、命のやり取りをする非日常的でかつ人と直接的に接する世界を描いたドラマは食傷気味。「不動産」という、人と人とがガチでぶつかり合う日常的な世界に新たなテレビドラマのフィールドを見出したのか。
二匹目のドジョウを狙って(?)、この10月から4つの不動産系のテレビドラマがスタート。どれも現在の社会的な問題を背景に描かれているところが興味深い。
菅野美穂主演『砂の塔~知りすぎた隣人』
菅野美穂が4年ぶりにドラマ主演となった、TBSの金曜ドラマ。10月14日22時スタート。
タワーマンションに住むことになった平凡な主婦(菅野美穂)が、セレブな妻たちのイジメにあうなかで、松嶋菜々子が不気味な隣人を演じている。
ただでさえ、眺望の良い高層階の億ションの住人を、中低層階の住人が支えているという経済格差が分かりやすいタワーマンションの基本的な構図。ドラマではいやらしい人間関係が強調され過ぎて、一部のタワマン住民からは資産価値が損なわれるとブーイングが出ている。
今後はタワマン・ネガティブなドラマはロケ先の確保が難しそうだ。
大島美幸・安藤なつ共演『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』
原作は漫画家マキヒロチの同名作品。テレビ東京で10月14日24時52分スタート。
「住みたい街ランキング」第1位の吉祥寺で不動産を営むポッチャリ系の双子姉妹が吉祥寺以外の物件を紹介していくストーリー。
『森三中』の大島美幸も、『メイプル超合金』の安藤なつも、ポッチャリ系の双子姉妹というよりも大根姉妹。ともに感じの良い女性ではあるが、いかんせん演技が下手すぎる(そういう演技でいいと指導されているのかもしれないが)。住まい探しで悩める人に、その人にピッタリの不動産を紹介することになるのだが、不動産ドラマというよりも、どちらかといえば、お店を紹介する情報番組に仕上がっている。
森川葵主演『プリンセスメゾン』
原作は漫画家、池辺葵の同名作品。NHKのBSプレミアムで10月25日23時15分からスタート。
26歳、居酒屋勤務、結婚の予定なしの年収250万円の沼越幸が「マンション購入」を目標に生きる(全8回)。
舞台は、『MJ MAISON TOYOSU WEST』を販売している持井不動産レジデンシャルのマンションギャラリー。放送法第83条により広告放送が禁止されているNHK。大手不動産の社名が容易に想像できる「持井不動産レジデンシャル」はOKなのか?
NHKが不動産をテーマにしたドラマを放送することに、なんらかの意図はあるのか? 若い女性に新築マンションを買わせて、マンション市場の底上げをさせようという国家戦略の後押しか? なんてね。
黒木メイサ主演『拝啓、民泊様。』
黒木メイサが5年ぶりにドラマ主演。TBSで10月26日25時28分スタート。
怪しい民泊管理会社のハウスフリーエージェント民沢琢己(島丈明)に丸め込まれて、ローンを組んで民泊を始める山下寛太(新井浩文)。その連帯保証人にならされる勝気な妻、山下沙織(黒木メイサ)。
民泊という取り扱いが難しいテーマを扱ったこのドラマ。深夜枠とはいえ、民泊のあり方議論に与える影響は少なくないのでは。
現在、特区民泊を進めている大田区が特別協力しているから、闇民泊に資する展開にはならないだろうが。
画像:『写真AC』http://bit.ly/2e76lrS
グラフ:ウィキペディア『家売るオンナ』データを元に著者作成
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