弱いなら弱いままで。

【無料記事】編集者がいつも作家の才能を見抜けるわけではないという証拠。(1204文字)

2012/09/28 14:45 投稿

コメント:3

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  • アンドレ・バーナード
まことに残念ですが…―不朽の名作への「不採用通知」160選 (徳間文庫)

 『まことに残念ですが…』と題する本がある。サブタイトルが「不朽の名作への「不採用通知」160選」と題されていることからもわかる通り、今日、不朽の名作といわれている作品への「断り状」を集めた一冊だ。

 この本は、ぼくたちに、のちのベストセラーですら、何度となく出版を断られる例があることを教えてくれる。たとえば、ノーベル賞作家パール・バックのピュリツァー賞受賞作『大地』は、近代中国を舞台に、ある一家の遍歴を綴った長編小説だ。

 ぼくも読んだ。名作だった。しかし、この不朽の名作は、「まことに残念ですが、アメリカの読者は中国のことなど一切興味がありません。」と、あっさり断られた。

 また、アメリカの伝記作家アーヴィング・ストーンの第一作目はヴァン・ゴッホの伝記だった。かれは書き上げた原稿をみずから某社に持ちこんだ。その結果は、「封を開けられもしなかった――原稿の入った小包はわたしより先に家に戻っていた」。その後、この原稿は15社から断られた末に出版され、少々売れた。少々、つまり、2500万部ほど。

 コナン・ドイルのシャーロック・ホームズものの初長編『緋色の研究』も断られた。アガサ・クリスティのエルキュール・ポワロものの、同じく初長編である『スタイルズ荘の怪事件』も断られた。

 ただ断られるだけなら仕方ないが、ほとんど悪意をもたれているとしか思われない例もある。米国の作家ハリー・クルーズの『未発表短編集』(未訳)の断り状には、このように書かれていたという。「火にくべよ、お若いの。焼いてしまうがいい。炎がすべてを浄化してくれるだろう」。

 もっと親切なひともいる。詩人のA・ウィルバー・スティーヴンスは、あるとき、わずかに面識のあった編集者に原稿を送った。戻ってきた返信封筒をあけると、少量の灰がぱらぱらとこぼれ落ちた。

 あのアレクサンドル・デュマのある小説はこう断られた。「戯曲に専念したまえ、きみ。自分でも劇作のほうが得意なのはわかっているはずだ」。もしデュマが素直にこの忠告に従っていれば、『三銃士』も『鉄仮面』も『モンテ・クリスト伯』もなかったわけだ。

 しかし、何と言っても、ぼくが最高傑作として挙げたい文章は、ガートルード・スタインの『小説アイダ』への断り状に尽きる。

 わたしはたったひとりです。たったひとり、たった。たったひとりの人間で、いちどにひとりにしかなれません。ふたりでもなく、三人でもなく、たったひとり。たったひとつの人生を生き、一時間はたった六〇分。たったひとそろいの目。たったひとつの脳。たったひとり。たったひとりで、たったひとそろいの目で、たったひとつの時間とたったひとつの人生しかないので、あなたの原稿を三回も四回も読めません。たった一回も読めません。たったいちど、たったいちど見ただけで十分。たった一冊も売れないでしょう。たった一冊も、たった。

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海燕

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コメント

傑作って何かしら今までの作品とは違うものだしさ。

やっぱり日頃からアンテナ張ってる人じゃないと気付けないんだろね。

No.1 147ヶ月前

編集者の無能もそうだけど、才能の発掘がいかに難しいかってことだよね。
いまネットの普及で何でも自分で発表する下地ができてきて、小説や音楽いろんな文化が様変わりしてるんじゃないかな。youtube、ニコ動、ウェブコミック、初音ミクとか携帯小説なんかができてきて既存の業界に頼らないで多くの人に知ってもらえるのはすごい。

No.2 147ヶ月前

編集者、書評家も人間だもの。
自分の人間性、価値観を完全に切り離して作品を評価するなんて不可能なんだろうね。

No.3 147ヶ月前
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