王都炎上―アルスラーン戦記〈1〉 (光文社文庫)

 作家の田中芳樹さんが所属している有限会社らいとすたっふの「らいとすたっふ所属作家の著作物の二次利用に関する規定」が改定されたことが話題を呼んでいる。

http://www.wrightstaff.co.jp/

 「露骨な性描写や同性愛表現が含まれる」二次創作を禁止した項目を廃し、新たに「過激な性描写(異性間、同性間を問わず)を含まないこと」とする項目を加えたようだ。

 いままでの書き方ではことさらに同性愛描写を禁止するように受け取られかねないから、これは適切な変更だと思う。

 もちろん、らいとすたっふ側にそのような意図はなく、ただ「いわゆるカップリング」を抑制したいというだけの目的だったのだろうが、誤解や曲解を招きかねない表現であることに違いはない。変更されて良かった。

 しかし、この規定には微妙な含みがある。

 「過激な性描写(異性間、同性間を問わず)を含まない」なら、「いわゆるカップリング」的な同性愛描写そのものは「お咎めなし」にあたるのだろうか。

 判断はむずかしいところだと思うが、Twitterで検索してみたところ、いわゆる腐女子界隈の人たちはこれを「18禁でなければカップリングも問題なし」と受け止めている人も多いようだ。

 ただ、これで全面的にカップリング描写が認められたと見ることはいかにも早計には思える。

 原作者がそういう描写を好ましいと思っていないことはたしかだろうから、何かのきっかけで再度規定が変更ということもありえる。注意するべきではないだろうか。

 というか、あきらかに原作者が嫌がっているような二次創作を展開しても後ろめたさがありそうなものだが、そういうものでもないのだろうか。

 人それぞれだろうが、自分が気分良ければいいと思う人もいるのかもしれない。

 もともとが人気があり、これからさらに人気に火がつく可能性が高い作品だけに、今後、どういう展開をたどるのか注目してみたいと思う。

 それにしても、「同性愛のカップリング」一般を禁止することは、意外に色々な問題を抱えているようだ。

 シンプルに「同性愛のカップリングを禁じる」と書けば、それなら異性愛のカップリングは良いのか、それは同性愛差別ではないか、と受け取られる。

 しかし、作者の心理として自分のキャラクターがかってに同性愛者化されたところは見たくないという人がいても、それほどおかしいなこととはいえないのではないか(田中芳樹がそうだというのではないが)。

 じっさい、ぼくにしても、「同性愛的なカップリング」の禁止が同性愛差別化というと――やはり、それは違うんじゃないか?と思える。

 まず、なんといってもそれらの二次創作が原作作中の登場人物の性的指向をねじ曲げているようには思えるわけで、異性愛とか同性愛という以前に、それこそが問題なのだ、と考えると話はシンプルになると思う。

 つまり、「作中で異性愛者として描かれている人物を同性愛者であるかのように描くこと」はやはり不快である、そういうふうに表明しても同性愛差別にはあたらないのではないだろうか。

 当然、この理屈で行くと