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 電撃文庫から『Fate』の新作が出ていますね。成田良悟『Fate/strange Fake』。未読なので内容はわかりませんが、ほんとに『Fate』の世界は果てしないなあ、と感嘆しきり。

 正直、もう『Fate』はいいから他のシリーズを始めてよ、という気もなくはないのですが、発表される新作を読んでみるとじっさい面白いからあまり文句もいえない。むずかしいところです。

 それにしても、『Fate』って過去11年間で何作くらい出ているんだろ? まずはシリーズの「正典」ともいうべき『Fate/stay night』、そのファンディスクの『Fate/hollow ataraxia』がありますよね。

 それから虚淵玄が圧倒的迫力と完成度で『Fate』の前日譚を描いた『Fate/Zero』。それにプレイステーション・ポータブルのゲーム『Fate/EXTRA』、その続編『Fate/EXTRA CCC』。

 『Fate』の原型を小説化した『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』、さらにパラレルワールドを描いた小説『Fate/Apocrypha』、何だかよくわからん漫画『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』があります。

 さらにさらに、この春から『Fate/Grand Order』と題する何やらやたら面白そうなRPG(?)が始まるとか。もちろん、これらの作品群はそれぞれがアニメ化したり漫画化したりしているわけで、全部で何シリーズになるのかはちょっと数えきれない感じ。20作くらいは行っているのではないでしょうか。

 いや、もうほとんど『ガンダム』とかに匹敵する、日本のオタク業界を代表する一大エンターテインメントシリーズに成りおおせた印象ですが、でも、これでいいのか?という一抹の疑問が残ることもたしか。

 何といってもいまに至るも『Fate』のなかでいちばん面白いのはオリジンの『Fate/stay night』であって、その後の『Fate』はいわば「番外編」に過ぎません。

 だから、ひたすら「番外編」を増やすのはこれくらいにして「新作」をこそ描いてほしい、そう思っても無理はないところではないでしょうか。

 じっさい、『Fate/stay night』以降、『Fate』の実質的な「作者」である奈須きのこは、それらの「番外編」の展開に関わりながら、ほとんど「新作」を発表していないわけで、もういいかげんにしてくれないかな、と思ってしまう気持ちも正直あります(『DDD』とかあるけれどね)。

 たしかに『Fate』の二次展開はどれもそれなりには面白い。なかには、『Zero』のようなオリジンをも超えたのではないか?と思わせられる破格の作品もある。

 しかし、それでもなお、それらはどこまで行っても「外伝」、「外典」、「番外編」、「前日譚」、「パラレルワールド」の類であるに過ぎず、純粋に『Fate』を乗り越えたとはいえない。

 そうだとすれば、いまこそ純然たる新しいイマジネーションを以って、『Fate』よりもさらに面白いエンターテインメントを志してほしい。そう願っているのはぼくだけではないでしょう。

 いやまあ、永野護が『ファイブスター物語』を描きつづけているように、荒木飛呂彦が『ジョジョの奇妙な冒険』を更新しつづけているように、奈須きのこはひたすら『Fate』を書いていればいい、そういう考え方もあるとは思う。

 しかし――やっぱりもったいないよなあ。本来、奈須さんの作品世界は『Fate』をも超えてもっとはるかに壮大に広がっているはずで、「それ」をこそ見せてほしいわけですよ。

 たしかに『Fate』は面白い。単なる「番外編」であってなお、どれも十分以上に面白いのだけれど、でもね、ぼくは「最高」しか求めていない。

 奈須きのこには「超一流」であってほしい。「最高」、「至上」の作品をこそ生み出してほしい。それだけの桁外れの才能を持ったクリエイターなのだから――そういうふうに思う。

 初めて奈須きのこの名前を知ったのは15年前、血まみれの20世紀がようやく終わろうとしていた頃。『月姫』という同人ゲームのタイトルが耳に入って来たときでした。