ここには「金づる」になる人について、こう書かれています。
売人側は、一度こういう人を見つけたら“決して離さない”し、最初から積極的に“アプローチして”きます。たとえば最初は合コンで、かわいい女の子があなたに目線を送ってくるんです。で「あれ? えっ? そういうこと?」とか言って、いい感じになったら、ベッドの中でさあこれから!って感じのタイミングで彼女は言い出します。「ねえ、コレ使おうよ」と。彼らはどうやれば男性側が最も断りにくいか、熟知してます。ちなみに、この女性もかるーくジャンキーです。こういう役目を担うことにより、彼女は自分の薬代を一ヶ月分タダで手に入れられる。そう言われれば、この役目を(喜んで)引き受けます。つまり、あなたが「超有名人の、お金持ちの、息子、娘」であったなら、こういうことの誘惑は、普通の人であるあなた、私より、圧倒的に大きいんです。有名な芸能人、スポーツ選手、政治家などの息子、娘であって、一度こういうものが手に入ってしまうと・・・相手が離してくれなくなるんです。
なるほどなあ。それは断れないよなあ。はっきり覚醒剤だとわかっていたらそれでも断るかもしれないけれど、「ちょっと気持ちよくなるお薬」とか云われたらちょっとこれは断りづらい。
そして一回使ってしまったらあとは泥沼。つまりは金持ちや金持ちの家族は、こういうことに対して一般人の何倍ものリスクを抱えて生活しているということなんでしょうね。そしてまた、一般人の何倍かの自制心を求められていると。
かれらがしばしば薬物絡みの事件を起こすのは、必ずしもひとよりだらしない性格だったり、また「甘やかされてダメに育った」からではなく、そもそもリスクが高いところで暮らしているからなんだというお話。うーん、恐ろしい。
莫大な資産を築きながら一朝にすべてを失った小室哲哉などを見てもわかる通り、成功者のもとにはそのお金を狙う人々が集まって来る。だから成功者はだまされることを警戒しなければならない。
そうかといって「人間なんて誰も信じられない」とか云い出してしまうと、今度は人間不信の猜疑地獄に落ちるだけだし、ほんとうにここらへんのバランスはむずかしい。いちばんのディフェンスは「経済的に成功しないこと」なのではないかと思うくらい。
まあ、もちろんそれでもなおすべては自分の自制心の問題なのであり、ひとに責任を仮託する訳にはいかないということも真実ではあるけれど、それはいかにもきびしすぎる正論だよなあ、とも思う。
正論であることは間違いないけれど、そこには「正しさより大切なものが欠けている」のではないか。ドラッグの使用に対して寛大になれというつもりはない。そうではなく、平均的な人より遥かにリスキーな状況にある人々に対して優しい視線があってもいいのではないか、ということだ。
あなただって、ようやくベッドに連れ込んだ可愛い女の子に、「ね、ちょっとこのビタミン剤(でも媚薬でも)使ってみない?」と云われたら断りきれないと思いませんか。まさかその子がバイニンの手先だろうとは思いもしないのが普通だろうと思う。
じっさい、そういうことがあったのかどうかはわからないけれど、そういうような手管が使われたのだとしたら、ぼくはドラッグ中毒者に少々同情してしまう。もちろん決して「仕方ない」わけではないにせよ、だ。
まあ、日本は世界的に見ても相当ドラッグに対してきびしい国民感情を持っている国で、何年も前から近いうちにドラッグが蔓延するだろうと予言されているにもかかわらず、そういう事態にはなっていない。
たとえば、いまから9年前の2005年に発売された『こどものためのドラッグ大全』という本では、こう書かれていた。
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