さて、『グイン・サーガ』の話である。さまざまな点で不世出の作家であった栗本薫の逝去から数年、いま、ついにこの作品は五代ゆうと宵野ゆめ、ふたりの作家に受け継がれ続刊刊行の運びとなった。
まずはめでたい、と云うべきか。しかし、長年、いち読者として物語を追いかけてきたぼくの内心は複雑である。
何といっても『グイン・サーガ』は栗本がただひとり連綿と綴ってきた物語だ。グイン、イシュトヴァーン、レムス、リンダ、ヴァレリウス、マリウス――いずれの登場人物も、彼女の魂の深淵から産み落とされており、余人が模倣できない無二の個性を備えている。
小説技巧の巧拙の問題ではない。上手いとか下手だといった次元を超えて、栗本は彼女にしか書けない小説を書いていた。
『グイン・サーガ』を未読の方は、たとえば荒木飛呂彦以外の作家が『ジョジョの奇妙な冒険』を描くところを想像してみてほしい。どんな練達の作家が手
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