今さら聞けない本当の恋愛入門 (宝島SUGOI文庫)

山のあなたの空遠く
幸い住むとひとのいう

ああ、われひとと尋(と)めゆきて
涙さしぐみかえり来(き)ぬ

山のあなたになおとおく
幸い住むとひとのいう

 上田敏の翻訳詩集『海潮音』に収録されているカール・ブッセの有名な詩です。

 きわめてわかりやすいうえに印象的な内容で、人口に膾炙しているわけですが、ぼくはこの詩を思うたびに「幸せって何だろう?」と考えこんでしまいます。

 この詩はメーテルリンクの『青い鳥』とは反対に、「幸せ」を「どこか遠くにしかないもの」、「決して手が届かないもの」として描いているように思えます。

 それはたしかに幸福の本質を捉えていて、その切なさがひとの心を打つのでしょう。

 「山のあなたの空遠く 幸い住むとひとのいう」。上田敏の才能なのでしょうが、よくこんな言葉を思いつくものです。

 で、きょうは「幸せ」とか「リア充」の話をしたいと思うのですが、いやー、幸せってな