ついこないだうちのサークルが夏コミに出した新刊『敷居の部屋の最前線』の座談会で出てきた話題で「似たようだけどちょっと違うもの」ってのがあったんですよね。「小説家になろう」について、似たようなテーマ・アイデアを元に色んな人が「そうだそうだ。でもこことここがちょっと違うんだよな、俺はこうだ」ってのをいろいろ試行錯誤していて、それって創作の基本だよねという。で、基本的に長編で作者の「俺はこう思う」と読者の「僕らこういうのだと思う」が一致し続けることはなく、いつかは絶対に作者の個性によってずれていく。ずれた結果が面白ければ何の問題もなく、また奇跡的に長期間ずれないまま保持されるととんでもない人気が出たりする……とかまあ、そんな話なんですが。
読者の期待は裏切られることがふつうである。ふつうでない作品を「傑作」と呼ぶ。(2109文字)
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あまりわかりやすくない敷居さんの記事がなぜか100ブクマに到達しているので引用してみた。
しかし、この話題はおもしろいなあ。以下、敷居さんが語っていることとは微妙にずれるかもしれませんが、ぼくなりの話を展開しましょう。
さて、小説なり漫画なり、映画なり、何かしら作品を読んだり観たりする消費者は、その作品にふれる前に何らかの「期待」を抱いているものです。
そうでなければそもそも作品にふれようなどと思わないでしょうから、これはあたりまえのこと。
しかし、その期待が完全に満たされることはめったにない。
それはその期待に応えられるほどの傑作がめったにないからでもありますが、そもそも期待というものが消費者の側のかってな願望に過ぎないからでもあります。
消費者はわがままなものです。仮に作り手の側が「至純のラブストーリーを描きたい」と思っていたとしても、受け手のほうは「スカっとするアクションものを見たい」と思っているかもしれない。
製作者の想いと消費者の期待は、すれちがっていることがむしろふつうなのです。
もちろん、あまりにすれ違いすぎていたらだれも読まないし観ないで終わるでしょうが、とにかくこれらが完全に一致することはまずありえないと云える。
しかし、世の中にはそのありえない例というものがちゃんとあるんですね。
「おれたちが見たかったものはまさにこれだ!」という素晴らしいイメージを提供してくれる作品が、じっさいたまにはある。
そういう作品は時代に冠絶するヒット作になりえます。そしてそのすごみは、消費者が自覚すらしていなかった「ほんとうの気もち」をも汲み取っている(ように見える)ところにある。
そういう作品を受け止める消費者は、「そうだ、自分では気づいていなかったけれど、おれが見たかったものはまさにこれだ!」と考えるわけです。
その場合、
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