若き日の天才の肖像。「第四の攻殻機動隊」はいかに草薙素子の過去を描いたか。(1968文字)
1話およそ1時間弱のエピソード全4話から構成されるという変則的な構成の映画。第2話の上映が待ち望まれる『コードギアス 亡国のアキト』とほぼ同じ上映方法ですね。最近はこういう変わった形のアニメ映画が増えました。
当然というか、地元新潟では上映していないので、東京で観るつもりだったのですが、なんとプレイステーションストアでダウンロード可能で、自宅にいながらにして普通に観れてしまうということがわかったので、行くのをやめました。
地方在住の人間にとってはこういうシステムはありがたいけれど、劇場へ行こうという意欲は削がれるなあ。
さて、そういうわけで、『ARISE』。原作漫画、押井守監督による映画版、神山健治監督によるテレビシリーズに続く「第四の攻殻機動隊」ということになるわけですが、じっさいの出来はどうだったのか?
まあ、ぼくの評価は「それなりにそれなり」というところかなあ。今回、物語はいままでの『攻殻機動隊』よりも時間軸を過去にさかのぼり、「攻殻機動隊」公安九課設立までのエピソードを描いていく模様です。
第1話はハードボイルドミステリ風の描写になっていて、いまだ仲間ではない草薙素子、バトー、トグサらが個別に活動する様子が描かれます。
いまはある軍務機関に勤める素子は、なぞの死を遂げた軍人の秘密を巡る事件を解決に導くことができるのか? サスペンスフルな物語が展開します。
ただ、過去の『攻殻』を知っていると、どうしてもそれと比べてしまうことは否めません。そういう視点で見るとやはり画面に映像的な新味がないことが気にかかる。
この点では、やはり押井守による『GOHST IN THE SHELL』は絶品であったといえるでしょう。
神山健治による『STAND ALONE COMPLEX』はある意味では映像的に押井版を超克することはあきらめ、よりぼくたちの日常と地続きの『攻殻』世界を生み出しました。それは『攻殻』世界の間口を広くすることに成功したといえます。
そして『ARISE』はそんな『S.A.C.』の映像表現を踏襲しているように見えます。露骨に現代日本風の街並みがそこかしこに見え、『S.A.C.』以上に「地続き感」を出しています。
しかし、すでに『S.A.C.』から10年以上が経っているにもかかわらず、新しい映像的なチャレンジが特に見あたらないことはやはり残念です。
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