小野不由美『十二国記』を再読する。堅牢たる名文で綴られるその不思議な世界。(1586文字)
幾度目になるか、小野不由美『十二国記』を読み返している。今回は新潮文庫の完全版だ。山田章博の挿絵が付されたこの版で既刊をすべて出し終えたあと、新作が続くのだという。11年待った作品である。待望という言葉がふさわしい。
この11年間、小野がどう時を過ごして来たのか知らない。おそらく何か新作を出せない事情があったのだろう。一読者としてはその事情を超え新作が上梓されることを歓びたい。
それにしても、あらためて読み返してみると、この小説の面白さはただ事ではない。破格である。極上である。何よりその文章。恐ろしく緊密に練り上げられた文章は、読めば読むほど味が出る。いったいどれほどの修練が、あるいは集中が、このような文章を生み出すのか。気が遠くなる。
初めはたしかにここまで洗練されてはいなかった。かつてのX文庫ホワイトハート版では、序盤の文章にはまだいくらか隙があった。しかし、全編にわたり再度の推敲がほどこされたこの完全版にそれはない。まさに堅牢、精密無比の名文を楽しめる。素晴らしい。
作家の成長を見守ることは読者の大きな歓びだ。小野もまた『十二国記』を通して大きく成長した。いま、その風格は比類ない。時はこの作家を稀代の文章家にまで育て上げたのだ。
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コメント
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十二国記新作たのしみですな!
もう10年以上前の作品になるんですねぇw
でもあの面白さはよく覚えているし全く薄らいでない!?
最初の巻の上から下に入った、
まさに楽俊と出会った時の感動は一生忘れません!
あの濃厚な世界観に再び出会うのが待ち遠しいです!!