ここ数カ月で『職業としてのAV女優』と『デフレ化するセックス』という本を続けて読みました。この二冊にはゼロ年代後半からテン年代にかけてのAV女優の変化が描かれています。
昔は「特別なひとだけの仕事」だったAV女優はいまや「普通の女の子の仕事」であり、また、志望動機もお金だけではなくやりがいや「承認」が大きなウェイトを占めているというのです。
承認。つまりひとに認められ、必要とされ、尊重されること。ぼくはこれらの本を読んで、それはひとはかくも承認に飢えているものなのだろうか、と感慨に耽りました。ひとは他人にちやほやされるためなら人前でセックスすることすらいとわないものなのですね。
これはもちろん若い女性に限らない。だれでも、生きるためには他人に尊重されることが必要なのです。曽田正人の傑作漫画『昴』で、主人公の昴が、自分が踊るのは「尊重されて生きるため」だと語る場面がありますが、昴のように特別な才能がない人間は裸になったり精液を浴びたりすることでしか承認を獲得することができないのでしょう。いや、それすら叶わないひとが大勢いるのが現実です。
そう考えると、承認とは何と得がたいものなのかとつくづく思わずにいられません。幼い頃から愛情が伝わるように育てることの大切さがしみじみわかりますね。
まあ、子供の頃は親がていねいに愛してくれていれば自分は十分に尊重されていると感じることができるかもしれませんが、大人になるとなかなかはそうは行きません。そこで、ひとは他人に尊重されようとさまざまな努力を始めることになります。
ニコニコ動画に無料で途方もなく凝った動画をアップするひとが無数にいるのも、究極的には承認のためです。やっぱりみんな褒めてほしいし、認めてほしいんですよ。そのためなら努力できるし、時間や労力を注ぎこむこともいとわない。これはAV女優が一時ちやほやされるためにカメラの前でセックスしてみせるのと本質的には同じことです。
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