キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)

 ぼくたちはいま、インターネットを通じたくさんの「ビオトープ」を創りだし、そこにひたって生きている。ビオトープとは、佐々木俊尚さんの『キュレーションの時代』に出てくる言葉で、ぼくの解釈では「ある関心を共有する人間たちによって作られる小さな空間」を指す。本文からその定義にふれている箇所を引用しておこう。

 この「情報を求める人が存在している場所」を、本書ではビオトープと呼ぶことにしましょう。
 ビオトープというのはガーデニングや環境問題に関心のある方ならよく知っている単語だと思いますが、「生息空間」というような意味の言葉です。環境保護先進国のドイツで生まれた概念で、ギリシャ語でビオ(bio)は生命、トープ(tope)は場所を意味し、この二つを合わせて「有機的に結びついた、いくつかの種の生物で構成された生物群の生息空間」というように定義されています。小さな生態系が維持されるための、最小の単位といういいかたもできるかもしれません。森の中にぽっかりと開いた池や湿地帯。そういう場所で生き物たちは楽しくひそやかに暮らしています。

 つまりビオトープは、ある情報に対して興味を抱いている人々が自然と集ってくる「場」のことなのだ。ペトロニウスさん(@Gaius_Petronius)などは「コミュニケーション・ビオトープ」といういい方をしているようなので、ぼくもこれを採用したいと思う。

 これから訪れる「キュレーションの時代」においては、ひとはこのコミュニケーション・ビオトープを作り、あるいはそこに生息することで、人生を楽しく盛り上げることができるようになるとぼくは思っている。

 もちろん、ビオトープは自然発生的に生まれるものでもある。しかし、自然発生したものはときにあっさり自然消滅してしまう。そういうふうにしたくないと思うならば、意識してケアすることが必要だろう。つまり、生息空間の手入れである。

 それは具体的には、Twitterで交流しつづけることであったり、たまにオフ会を開いてリアルでの対話を続けることであったりするだろう。ぼくもそういうふうにして自分のビオトープを手入れしているつもりである。