非モテレンアイ

 経済学者の森永卓郎さんが「イケメン税」なるアイディアを提唱し話題になっている。

   2012年12月11日、朝日新聞デジタルに経済アナリストの森永卓郎さんの「イケメン税で恋愛の格差是正を」というインタビューが掲載された。

   「ニッポンのもう一つの形や新しい姿を考え、語り合う」というFacebookを利用した朝日新聞の新年企画「オルタナティブ・ニッポン」で、森永さんは「少子化の原因である非婚化を解消するため、イケメン税導入を」と提案している。

   森永さんはインタビューに対し「所得の格差がよく注目されるが、もっと深刻なのは容姿の格差。見た目がよい男性はとんでもない数の女性を獲得している。同時に100人以上の女性と関係している男性もいる。その結果、女性が一部の男性に集中するという問題が起きている」と指摘。「イケメン」の所得税は倍にする一方、容姿のすぐれていない男性の所得税は1~2割減額を、と主張している。

http://www.j-cast.com/2012/12/11157616.html

 これに対し、ネットでは賛否両論が巻き起こっているようだ。ぼく自身はどうなのかといえば、はっきり「否」の立場に立つ。なぜなら、これはつまり「自分の好きな恋愛相手を選ぶ」という女性の権利を制限することによって少子化を改善しようとするやり方だと思うからだ。

 「恋愛の格差是正」といえば聞こえは良いが、その実態は個人の自由の侵害である。本質的に不健全な発想としか思えない。そもそも「女性が一部の男性に集中するという問題が起きている」というが、それなら「男性が一部の女性に集中している」問題をなぜ放置するのか。

 「イケメン税」が必要だというなら、同じ理由で「美女法」でも制定し、男性が女性を容姿で選ぶことを抑制するべきではないのか。女性が男性を容姿で選ぶことは是正されるべきだが、男性が女性を容姿で選ぶ権利は守られて当然だというのなら、ところんまで男性本位な発想というしかない。

 森永氏に限らず、「非モテ」を自認するひとたちは良く「しょせん女は男を顔で選ぶ」といい、「人間性なんて評価されない」と嘆く。これは男性が女性以上に容姿でひとを判定しているという事実を無視した上で「女なんてその程度のものだ」と女性を蔑視する見方だと思うわけだが、それはまあいい。

 考えてもみてほしい、もしそのひとが容姿は劣っているが人格は魅力的だというのなら、顔が見えないネットでならそのひとは人気者になれるはずではないか。しかし、ネットでは大人気だが、直接会ってみたら容姿の問題で振られた、というような話は、全くないわけではないにしろあまり聞かない。

 結局のところ、リアルでひとに好かれないひとは、ネットでもやはりそうなのだろうと思う。容姿など関係なく、魅力的なひとは魅力的であり、そうでないひとはそうでないのだ。

 「自分は顔が悪いからモテない」と考えるひとは、「顔が良かったなら自分もモテたはず」という幻想にすがりついているように思える。はっきりいおう。ひとがモテない最大の理由は、そのひとの存在そのものに魅力がないからである。もし人格に輝くような魅力があれば、そのほかの多少のマイナスポイントを超えてひとに好かれることだろう。