「なぁ高城… お前は今多分不安で不安でしょうがないんだな 何もやった事が無いからまだ自分の大きさすら解らねえ… ――不安の原因はソコだ お前が何にもがんばれないのは 自分の大きさを知ってガッカリするのがこわいからだ だが高城 ガッカリしても大丈夫だ 「自分の大きさ」が解ったら 「何をしたらいいか」がやっと解る 自分の事が解ってくれば 「やりたい事」もだんだんぼんやり見えてくる そうすれば… 今のその「ものすごい不安」からだけは抜け出る事が出きるよ それだけは俺が保証する」
どうすれば真の自信を持てるのか。『3月のライオン』が描く「自分の大きさ」を知る方法。(2287文字)
本日14日、羽海野チカ『3月のライオン』の待望の第8巻が刊行された。現代漫画を代表する傑作である。もし未読の方がいらっしゃったら、ぜひ読んで、そして震えてほしい。巻を数えるほど凄みを増す鋭利な世界がそこにある。
鋭利と書いた。あるいは世間的にはこの作品はそういう言葉がふさわしいものとは思われていないかもしれない。しかし、羽海野チカが生み出す言葉の鋭さは、ときとして瞠目に値する。
やはり本日刊行の雑誌『ヤングアニマル』では、『3月のライオン』第8巻の続きがすぐに読めるのだが、その、第9巻に収録されることになるであろうエピソードにも恐ろしく鋭い言葉があった。ネタバレになるが、ここに記しておこう。そんなもの知りたくないという方は回れ右してください。いいですね?
さて、この回で、ある深刻ないじめ事件を起こしたひとりの少女に対し、学年主任の教師は語りかける。
とうの少女は何をいわれたのかわからないという呆然とした表情でこの言葉を聴く。しかし、この物語を読む我々読者には、この言葉は重く響く。なぜなら、ぼくたちは激しく世界にぶつかっていって、そのつど「自分の大きさ」を思い知らされ、それでもなおふたたび立ち上がっては、少しずつ成長してゆく人々を知っているからだ。いうまでもない、この物語の主人公である桐山零が代表する棋士たちがそれである。
将棋という競技は冷徹なまでの実力本位の世界だ。どんなに強い棋士でもときには負ける。かれらはそのたびに容赦なく「自分の大きさ」を突きつけられることになるわけだ。
どんなに努力していたとしても、あるいはどれほど強く自負していたとしても、負ければ現実を見せつけられる。そこで倒れ伏したままならばそれまで、それでもなお立ち上がり、さらなる難敵に立ち向かってゆく者だけが、少しでも成長することができるのだ。
これはもちろん、将棋だけにいえることではない。どんな世界で生きるにせよ、「ほんとうの自信」を手に入れるためには「世界にぶつかって、打ちのめされる」経験が不可欠だということ。
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コメント
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記事面白かったです。
この漫画のセリフは、展開の上手さもあって自分の中の目を背けたい部分にグサグサ刺さってきますよね。
高城さんは教師から語りかけられた時、呆然というか見捨てないで的な表情を浮かべていた気がしました。
新しい担任教師の言動から感じるに、今後高城さんは応報の道を歩む事になるんでしょう。
それを見据えた教師からの手向けの言葉として、今回のこのセリフはグッとくるものがありました。