『ファイブスター物語』のページをクリックすると、いくつかの新しいデザインがアップロードされているのが見つかる。星団を闊歩する主客キャラクターたち、そして新ロボット「ゴティックメード」たちの勇姿だ。
なかでもナイト・オブ・ゴールドならぬ「帝騎マグナパレス」の項目は面白かった。このマグナパレスは、まったく新しいデザインとなった「ツァラトゥストラ・アプターブリンガー」や「ダッカス・ザ・ブラックナイト」と異なり、モーターヘッド・ナイト・オブ・ゴールドの面影を強く残している。
というか、ナイト・オブ・ゴールドをゴティックメード風にリデザインしただけのものに見える。さすがに主役ロボットは大きく変えない選択をしたのか、というとそうではないらしい。どうやらこのマグナパレス、変形ロボットであるらしいのである。
注釈には「この姿は変形前の格好悪い方である」と記されている。わはは。そこまでいい切っちゃいますか。つまりは「ナイト・オブ・ゴールドのデザインはすでに古くて格好悪い。だから全面的に捨て去る」と宣言しているのだと思う。かっけー。このひと、かっけー。
もちろん、いままでもナイト・オブ・ゴールドやLEDミラージュ、ジュノーンといった主役級ロボットはリデザインが繰り返されていたわけだけれど、今回、ついに全面的な見直しが入ったことになる。微修正ではなく完全な新デザイン。
その背景には、永野護の「いままでのデザインはすでにダサい。遅れている」というクレバーな判断があったのだろう。たしかにゴティックメードの圧倒的に斬新なデザインを見ると、モーターヘッドですら、「普通のロボット」に見えてくる。
ここ最近の永野デザインのロボットに共通している特徴はウェストラインの極端な細さだと思うのだが、ゴティックメードはそれが胸部にまで及んでいて、きわめていびつな人体のデフォルメになっている。しかし、それがなんとも異様に美しい。
このスマートさと比べると、モーターヘッドはやはりもっさりしている。いや、常識的に考えればそれでもきわめてスマートなデザインなのだが……。
今回、永野護が行った「全設定のちゃぶ台ひっくり返し」に関しては当然、賛否があると思う。しかし、ぼくはやっぱりこのひとは凄いと感じざるを得ない。自分が生み出した最高の傑作デザインを「格好悪い」といい切り、あっさり捨て去っていく、そのストイックさ。
無難にやっておけばどこからも非難が飛んでこないところなのだ。モーターヘッドで十分格好いいとファンは考えているのだ。それなのに、作者ひとりだけが、「もうモーターヘッドの時代ではない」とあっさり自分自身の傑作に見切りをつけ、「次」へと向かう。
それがどれほど勇気がいることか、ほかにこんな真似をする作家がほとんどいないことを考えればわかるだろう。「凡人から見ればヒュートランは失敗作だ。しかし、最高傑作だ」。つまりは、どこまで自分にきびしくできるかということなのだ。楽な道を選ぶことなく、試練に身を晒すことができるかということなのだと思う。
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