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必殺ちゃぶ台ひっくり返し! 天才クリエイター永野護の「超一流」を目ざす挑戦。(3126文字)

2013/04/13 09:32 投稿

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  • 永野護
Newtype (ニュータイプ) 2013年 05月号 [雑誌]

 先日、アニメーション雑誌『ニュータイプ』誌上で永野護の漫画作品『ファイブスター物語』が連載再開した。しかし、その内容は読者の想像を超えて破格な驚くべきものだった。

 ネットでは既にネタバレ情報が飛び交っているから、すでに知っているひとも多いだろう。この記事もネタバレである。まだ連載再開後の展開について知らず、また情報を仕入れたくもないという『F.S.S.』の読者は、悪いことはいわないからいますぐ書店へ行って『ニュータイプ』を買ったほうがいい。

 できればそれからこの記事を読んでほしい。驚愕の展開についての感想を共有しよう。それでは、ここから先はネタバレである。くりかえすが、『ニュータイプ』を読んでいないひとはここから先を読むべきではない。

 さて、連載再開を待望していた『ファイブスター物語』の愛読者たちを襲った衝撃、それは「基本的な設定、歴史、物語が過去にさかのぼって改変されている」ということであった。いままで主役を務めていた戦闘兵器モーターヘッドにかわり、「ゴティックメード」という名の謎のロボットが登場し、ファティマたちは「オートマティック・フラワーズ」と呼ばれている!

 そして、それでいて、物語そのもの、登場人物そのものは紛れもなくいままでの物語の続きなのだ。いったいなにが起こったのか? 物語が始まって4ページ目の見開きを見て、バッシュならぬ「ダッカス・ザ・ブラックナイト」の姿を目にした読者のほとんどは、その瞬間、ほとんど何が起こったのかわからなかったに違いない。

 数千年前の話ならともかく、この時代、ジョーカー太陽星団で動いているのはモーターヘッドと呼ばれるロボット、それがいままで『ファイブスター物語』が語ってきた設定であり、全読者が共有していた「常識」であった。

 だれもがゴティックメードという設定は映画『ゴティックメード』のために作られたもので、『ファイブスター物語』とは間接的にしか関係していないと思っていた。しかし、なぜかその常識は崩壊してしまった。

 すべての読者はあたかも平行世界に迷い込んだかのように、いままでとはまったく違うジョーカー太陽星団の物語を目にすることになったのだ(ほんとうに平行世界なのかもしれないが)。いったいどういうことなのだろう? 何もわからない。

 そしてその衝撃は漫画部分が終わってからも続く。漫画のあとに続いた設定資料部分で語られているのは、これまたいままでと根本的に違う設定だったのだ。

 この世界にモーターヘッドは存在しない! 前回の話からのあいだにモーターヘッドがゴティックメードに変わったということではなく、この世界では初めからゴティックメードが活躍した来たのだという設定に変わっている!

 天照の帝がラキシスのために作ったロボットはナイト・オブ・ゴールドではなく「帝騎マグナパレス」であり、星団を火のうちに沈めたA.K.D.最強のロボットはLEDミラージュではなく「ツァラトゥストラ・アプターブリンガー」である。

 また、フィルモア帝国の主力ロボットは「ユーレイ」であり、クバルカン法国のロボットは「ルッセンブリード」である。いったいサイレンは、破裂の人形はどこへ行ってしまったのか? いや、「破裂の人形」という言葉は見つけることができるが、どうやら意味が変わっているようだ……。

 ここまで来て、多くの読者は「あっ」と気づいたことだろう。先月号の表紙を飾っていたあの謎のロボット、「ゴティックメード風ナイト・オブ・ゴールド」はモーターヘッド・ナイト・オブ・ゴールドではなく、ゴティックメード・マグナパレスだったということになる!

 どうやら永野護は、いままで連綿と続いてきた『ファイブスター物語』を一からリファインすることに決めたようなのだ。いや、それをリファインといっていいのだろうか? ふつうは「すべてがまったく新しい」といっても、基本的な設定には手をつけないものだ。あたりまえだ。そこにふれたら作品全体が崩壊してしまうかもしれないのだから。

 じっさい、『ファイブスター物語』にしても、いままでは基本設定をなるべく崩さない形で新たな設定を付け加えていくという方法論を順守していた。その結果、世界一といわれる膨大な設定が積まれることとなったが、それは基本的に無矛盾だったのである。

 しかし、今回の設定変更はいままでと矛盾しているどころの話ではない。作中のロボットに関するあらゆる設定は無効化された。読者はまた一からすべてを憶えなおさなくてはならないらしい。

 そう、これはスキャンダルだ。常識的に考えれば、あってはならないことだ。「反則」とか「ルール違反」といった言葉が浮かぶ。これはさすがにないだろう、と思う読者もいるだろう。ぼくもそういうふうに思わないこともない。これは許されない「禁じ手」であるようにも思える。

 

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