print pants のコメント

ヒッチコックの「サイコ」ではトリュフォーが「作中に同化できるような感じのいい人物が誰もいない」という指摘に対し「そんな必要なかった」と回答している。よって感情移入できる人物の有無は面白さの決定的な理由ではない。

個人的に思うのは、面白さの原点って「普通に生きていて気付かない世界(に対する視点)、真実性(リアリティではあなく生き方、真理とか)」だとおもう。
人が思う価値観、テーマは万人にそう違いはないし普遍的でいいが、そこからどう「普段目にする世界、誰かが描いた視点から分岐させるのか」。それをどうマネジメントして料理するかという構築力が表現力そのもの。話題の「デススト」もそう。基本はただのお使いゲーだし、言ってしまえば敵もよくある幽霊退治だが、ゲームの注力したシステムとテーマに対する個々の素材の貢献度が他と格段に違うから面白い。芳文社系もそうで「けいおん」「ゆるキャン」もその趣味に対する視点、(そういう趣味を誰かに正当性を主張できるような)真実性がある
「鬼滅の刃」「ワンピース」も当てはまる。尾田栄一郎の趣味は落語とかつての仁侠映画。その人とはなんなのか?というあの時代の泥臭い真実性を色濃く反映させたから(特に初期の)キャラのセリフが一つ一つ重かった。

さらに言えばそういった構成力は芸術的嗜好から生み出されるものなので「NOT ARTY」という言葉をうのみにするのも間違い。むしろ的確なモチーフでなるべく分かりやすく伝える手段として芸術はあるものだし、芸術とエンタメ的誇張の揺らぎのなかでこそ面白さは生まれる。それはヒッチコックの「映画術」を読めば間違いではないと思う(そもそもアートを知らない人間がどうしてアートか否かを判別しようというのか甚だ疑問だけど。)

つまり、面白い話を描きたきゃエンタメじゃなくて、芸術(特に文芸)理論と人間哲学を徹底的にやれ。

因みに「SAVE THE CAT」を参考にするのはやめとけ。
こういう技法書読むときはどういう人か調べるんだけど、最低脚本賞でラジー取ってるし名誉挽回している作品はなかった。またスピルバークが作品買ったとか言ってるが当時は脚本バブルで「とりあえず買っとけ」の状態。2000~3000万ドルがざらの環境で200万ドルの価格で売買。あとは分かるな?あの技術本しか売れてない。そしてそれは「技法書の中ですごく簡単に読める」から売れたのであって正当性があるかどうかは別。あと「フォレストガンプ」をバカの勝利、とかでくくっちゃう阿呆。(ありゃ「グレイテストショーマン」や「アルジャーノンに花束を」と一緒で純粋な「人間の尊厳の賛歌」が肝だ)

No.15 60ヶ月前

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