弱いなら弱いままで。

なぜいま人気を集めるのか。敗北を運命づけられた男、球磨川禊のパラドックス。(1752文字)

2012/11/20 11:07 投稿

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めだかボックス外伝 グッドルーザー球磨川 小説版(上)『水槽に蠢く脳だらけ』 (JUMP j BOOKS)

 最近、記事タイトルがマンネリ化しているなー。ま、いいか。記事に入ろう。

 さて。『めだかボックス』の最新人気投票では、またも球磨川禊が首位だった。生まれながらにして敗北の運命を課せられ、どんなに努力してもどうしても勝てないという十字架を背負ったこの男が、いま、ふしぎな人気を集めている。

 その背景には、やはり時代の変化があるのだと思う。かつて『ジャンプ』はどんなに打ちのめされても、そのたびにあきらめることなく立ち上がり、最後には勝利を手にする少年たちの物語を紡いできた。

 安西先生はいったものだ。「あきらめたらそこで試合終了だよ」。しかし、それはそうかもしれないが、それならあきらめなければいつかは勝てるのかといえば、そうでもない。日本全体が上昇していた頃はひたすらにあきらめないという姿勢が感動を生んだのだろうが、いま、それだけでは絵空事に見える一面がある。

 日本全体が沈滞するなかで人々は「がんばっても勝てない」という現実を受け入れるしかなくなってきたのだと思う。そこで球磨川である。かれは人並み外れた才能を持って生まれながら、ここ一番となるとどうしても勝てない男だ。

 ある意味、反少年漫画主人公とでもいうべき「マイナス」たちのリーダーであり、最凶の悪役として登場したこの少年は、『ジャンプ』のお約束に従って主人公の仲間になる。それから性格はだいぶ変わったように見えるが、苦境にあってなお「へらへら笑う」ことを信条とするかれのスタイルはいまの時代、やはり魅力的だ。

 「どんなにがんばっても勝てない」。その運命を受け入れた上で、それでもなお、戦うことを選ぶこと。それが球磨川のやり方である。かれはいま、主人公であるめだかに挑戦している。

 「決して勝てない」という運命を受け入れた上で、なおそれに挑戦する。そういう球磨川はたしかにどこまでも格好いい。主人公であるめだかを大きく引き離して人気首位を得てしまうのもむべなるかな、と思わせられるものがある。

 

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