新しい時代の新しい『ドラえもん』を見てきたよ。
3歳の甥っ子に付き添って『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』を観て来ました。事前情報ではなかなかの傑作と聞いていたけれど、いや、じっさいおもしろかったですよ。
今回の物語の舞台は22世紀の日本にある「ひみつ道具博物館」。古今東西、ありとあらゆるひみつ道具が収蔵されているというこの広大なミュージアムを舞台に、のび太たちの冒険が描かれます。
といっても今回は『ドラえもん』の歴史のなかでもターニング・ポイントとなるかもしれない異色作で、過去の『ドラえもん』とはだいぶ雰囲気が違っている。具体的にどう違うかというと、まず、いつものボスキャラ、「巨大な悪」が出てこない。
ポセイドンとかギガゾンビにあたるキャラクターがいないわけです。今回も地球は危機に陥りはするのだけれど、それは悪の力によるものというよりは人為的なミスによるもの。のび太たちは今回、強大な的に立ち向かう必要はないのです。
ここらへんをどう解釈するかが今回の見所になるのではないかと思う。「悪の親玉」が登場しないことによって、作品全体がシリアスな雰囲気を失っていることは間違いない。少なくとも『魔界大冒険』や『鉄人兵団』にあったような、あまりに巨大すぎる敵との絶望的な戦い、そしてその末の勝利というカタルシスは今回の作品にはない。
初期の『ドラえもん』には間違い無くあった「怖さ」や「暗さ」といった要素もほぼ消滅している。そこが物足りないといえば物足りない。この映画がたとえば『海底鬼岩城』のようにスリリングかというと、やはりそう断定するのは無理がある。
そのかわり全体にコミカルで、ギャグ満載ではある。今回初めて明かされるSF的な設定もいくつかあって、なかなかにセンス・オブ・ワンダーに富んでいる(いまさらこんな大きな設定を開陳してしまっていいのだろうかとも思いますが)。
さて、これをどう解釈するか。ぼくは物語中盤まではわりと批判的だったのですが、見終わる頃にはこれはこれで良いのかもしれないと思っていました。『ドラえもん』もやっぱり時代の産物であるわけで、初期劇場作品が「怖さ」や「暗さ」を抱えていたのは時代空気を反映していた側面が大きいはずです。
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