いろいろとせわしなく働くかたわら、小説を書いていました。われながら今回はいままでよりは出来がいいと思うので、ここに序章を載せておきます。これは完成させてどこかの新人賞に出すつもり。よければご一読ください。

『のらダンジョンを拾ったので愛情を込めて育ててみた』

 序章

 だんじょんです。ひろってください。

 ひらひらと桜の花びらさながら降りしきる真白い粉雪のなか、歳の頃、十四、五歳と見えるひとりの可憐な〈少女〉が、そう記された木製の看板を片手に持ち、ある名も知れない街道の端の小さな四角いダンボール箱のなかに座っていた。

 その箱には、この大陸の共通語とはまるで異なる奇妙な文字で、何か意味がわからない言葉が記されている。それは実は「和歌山みかん」と読むのだが、この世界にその文字を読める者はいないし、仮にいたとしてもここから始まる物語には一切の関係がない。

 そもそもダンボール箱なるものじたい