「小説家になろう」の『無職転生』を最新話まで読み終えた。最新話近くの物語が素晴らしい。一度に数百もの感想が寄せられたという意外性のある展開だ。ここに来て物語としてのレベルが一段上がったように思える。
この期に及んでまだ主人公が11歳というのが気になるが、もしみごとに完結までたどり着いたなら紛れもない秀作といえるだろう。ただでこれだけのものが読めるのだからありがたい。
ほんとうに最近の展開には「そうだよ! そうなんだよ!」と膝を叩く思いだった。前回の記事で「なろう的なるもの」に欺瞞を感じていると書いたが、この展開にはその欺瞞を乗り越えようとする意思が感じ取れるように思えたのだ。
そうなのだ。どんなご都合主義なお話でも、真摯に突き詰めていけば、真実と向き合わざるを得なくなるはずなのだ。「異世界でチートでウハウハ」なんてことにはなりえないはずなのである。
なぜなら、その作り物の世界でもひとは必死に生きており、決してお仕着せの運命を与えられてそのレールの上を歩んでいるわけではないはずだからである。
ヒロインにしても、決して主人公のために生まれて主人公のために死んでいくわけではない。どんな端役の女の子にも彼女だけの人生があり、物語があり、主人公だけのために存在しているわけではないのだ。
「異世界でチートでウハウハ」という物語にはやはりウソがある。そのウソをわかった上で楽しむのもいいが、ぼくはやはり真実の物語を読みたいと思う。
その真実とは、この世界で生きていくことは決して楽なことではありえないということである。ひととひとの間では常に競争と闘争が続いていて、敗れた者は時に命すら奪われるということである。
ここらへんのことを書いていくと長くなるが、ぼくが『グイン・サーガ』を好きなのはそこのところがきわめてシビアに描かれているからだ。たぶん多くのひとにとって、『グイン・サーガ』はどこか遠い世界の出来事を綴ったヒロイック・ファンタジーに過ぎないと思う。
しかし、違う。あれはようするに戯画化された現実の姿そのものなのだ。生命を賭けた戦いが続く中原の物語は、現実世界での戦いのありさまをことさらに強調して描いた物語なのである。
『グイン・サーガ』だけではなく、『真夜中の天使』を嚆矢とするボーイズ・ラブ小説も同じように現実の姿を戯画的に描いた作品群である。それらの作品のなかでは一様に主人公は何十人もの男にレイプされ、支配され、隷属させられるわけだが、あれは栗本にとってはこの世界の真実の姿だったに違いないとぼくは思っている。
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