昨日のラジオ、お聴きいただけたでしょうか。初めの辺りは埒もないことを喋っていたのですが、例によって後半になってノッてきて、おもしろいアイディアが出てきています。具体的にはペトロニウスさんがまとめていますので、以下をご参照ください。

http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130210/p1

 しかし、これだけではわかりづらいかもしれないので、ぼくなりに補足しておきたいと思います。

 さて、上記リンク先を読めばわかる通り、この話の根幹になっているものは、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の幼なじみキャラクター麻奈美は絡新婦(じょろうぐも)だ、というトンデモない話です(笑)。

 彼女は一見すると平凡な幼なじみキャラクターに見えますが、ペトロニウスさんいうところの戦国恋愛絵巻において超人的な計算高さを示す計算通り子(LDさんの命名)なのだ、というところからこの話は始まっています。

 というのも、麻奈実はこの手のラブコメのお約束として主人公の京介のことが好きで、かれを落とそうと画策しているわけですが、しかし決してストレートに告白したりしないのです。

 ここが、麻奈実、恐ろしい子!というところなのですが、彼女は京介を攻略するために十数年にわたって戦略を実行します。それも、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』という物語がどういう構造になっているかというメタ的な認識をもとに京介攻略戦略を練っているのです。

 この物語のメインヒロインは、タイトルにある「俺の妹」である桐野です。だから、なんの手も打たずに放置すれば京介は桐野と結ばれて終わってしまう。あるいはだれとも結ばれずに終わることになる。そこで田村・絡新婦・麻奈実は着実に手を打っていきます。

 この物語のメインヒロインが桐野である以上、最終的に京介と桐野のドラマツルギーを解決しないかぎり、仮に表面的に京介と結ばれたとしても、最終的な勝者にはなりえないという認識をもとに、意識して物語を進めようとするのです。

 ここらへんはじっさいに『俺妹』を読んでもらわないとわからないところなのですが、同じ事実に気づき、同じように対策しているのが黒猫です。彼女はいったん京介に告白しOKの返事をもらっておきながら、あえてかれと別れるという選択を行います。

 これは、桐野と京介の問題を解決しない限り、たとえ一時的にかれと結ばれとしても意味がないということをわかっているからこその行動です。ここで黒猫は完全に物語のメタレベルに立ち、物語構造を「読んで」行動しているのです。

 しかし、その黒猫の行動すら読み切った上でさらに計算ずくの戦略を練っているのが田村・諸葛孔明・麻奈実です。麻奈実は黒猫の行動を意図的に促進しさせします。物語を進ませ、京介と桐野の問題を解決した上で京介を自分のものにするためには、黒猫を利用する必要があったわけです。

 すべて計算通り! いやー、怖いですねー。まさに絡新婦の理。「あなたが――蜘蛛だったのですね」と京極堂にいわしめるだけの強烈なメタ戦略思考のもち主といえるでしょう。

 そう、一見すると普通のラブコメのように見えるこの作品の裏では、あたかも『ハチワンダイバー』での何百、何千手を読む棋士(ダイバー)たちの戦いのように、先の先まで読み切ったものだけが勝つというメタレベルの戦いが繰り広げられているのです(ほんとかなー)。