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参院選目前! 日本の政治の未来をジェンダー視点で読み解く/政治学者 三浦まりさん【前編】

2013/07/18 20:00 投稿

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女性の国会議員の割合は、世界標準で約20%。しかしながら日本では、わずか10%以下。この差はいったい何? ――そんな「政治学とジェンダー」を研究し続けているのが、上智大学法学部教授の三浦まりさん。政治と性差、ふたつのレンズを通して社会の現状を見る三浦さんに、日本の未来はどう映る?


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三浦まり/上智大学法学部教授。東京大学社会学科研究所研究員、カリフォルニア大学バークレー校国際経済研究所客員研究員、上智大学法学部助教授を経て現職。政治とジェンダーの関連性を幅広く研究し、『壁を超える:政治と行政のジェンダー主流化』(岩波書店/共著)など著書も多数。一児の母でもある。


■政治学を専攻した学生時代に感じた「日本の働きにくさ」


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三浦さんが政治学に興味を抱いたきっかけは、高校時代の世界史や倫理の授業。世界中で戦争や紛争が繰り返される近現代史を学ぶなかで、国家間の利害関係を生む根底にある政治を深く知りたくなったという。


「それで大学で政治学を専攻しましたが、研究者を目指すつもりはありませんでした。私の大学入学は1986年で、ちょうど男女雇用機会均等法が施行された年。均等法後に就職した最初の世代が私たちの先輩にあたりましたが、働く環境は依然厳しかった。企業の総合職はあまりにも狭き門で、とはいえ総合職以外で自分を活かせる仕事のビジョンは見えにくいなと思いました」


均等法施行後とはいえ、女性にとって、まだまだ選択肢が少なく厳しい仕事環境。その現実から逃げるように大学院に進んだが、そこで選んだ研究テーマは、皮肉にも「働き方」に関することだった。


「日本の政治や社会をより深く研究するうちに、日本が根本的に抱えている問題のひとつが、働き方だと感じたんです。自分が『就職か大学院か』で悩んだ時に感じた閉塞感ともつながったのでしょうね」


■「仕事のあり方」を研究して出合った、ジェンダーという視点


その後、三浦さんは米国の大学院で博士課程に進む。労働問題を起点に研究テーマを探すなかで、福祉国家について研究しようと決めた。そして、各国の労働のあり方や考え方を調べるうちに、ジェンダー(社会的につくられた性差)という課題も浮き彫りになってきたと語る。


「わかりやすいところでは、家事や育児は女性がおもに担うべき、という働き方の性別役割分担はいまだに存在しますね。政治学では公的な視点で福祉政策を見ますが、その背景には家族やパートナーとの関係性といった、個々の私的な要素がある。その両方をつなげる研究がしたいと思うようになりました。ジェンダー視点で政治学を捉えるという試みは、当時まだ少なかったと思います」


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自著・共著含めて、ジェンダーと政治学に関わる著作も多い。


■「キラキラ女子」はなぜおかしい? ジェンダー的な社会考察


現在の三浦さんは、おもに日本の女性国会議員の研究に取り組んでいる。


「日本の女性議員数は、海外と比べるとあまりに少ない。いま世界の100ヶ国近くが、女性議員に一定の人数を割り当てるクウォータ制を取り入れていますが、日本にもこの制度が導入されれば、現状は大きく変わると感じています」


学生を交えたゼミでも、ジェンダー視点を交えた研究を行う。すると学生たちが、普段メディアで触れる情報に、「ジェンダー・バイアス」というフィルターがかかっていることに気づき始めるという。


「男子学生が、雑誌の『キラキラ女子』という見出しはジェンダー的に偏りがある、『キラキラ女子』をもてはやすことで、じつは男性社会に都合のよい女性の生き方を奨励していると、鋭く指摘していました。男女の性のありようが、いかに社会的な環境によって作られているかということですね」


とはいえ、「理想のジェンダー視点は、性差をなくすことではない」と三浦さんは力説する。


「大切なのは男女の違いを認めつつ、セクシュアル・マイノリティを含めた多くの人にとって生きやすい多様性を認める姿勢です。性差はあるけれど、そこに上下関係を持ち込むからややこしくなる。人には性差も個人差もある。そのきめ細かい多様性を、社会や政治にも反映することが重要だと思います」


【後編に続く】


(撮影/長谷川秀司、取材・文/編集部・田中)

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