最近のテレビドラマや映画は、ミステリ小説が原作という作品が多くなりましたね。小説の映像化は賛否両論あると思いますが、そこは敢えて別物と割り切って楽しんでみてはいかがでしょう?
今回は、この春以降に映像化が決定したミステリ小説をご紹介します。
『金田一耕助VS明智小五郎』(角川文庫)まずはフジテレビでドラマ化が決まった芦辺拓著の『明智小五郎VS金田一耕助』です。2大名探偵が共演というミステリファンにはたまらない「パスティーシュ(作風の模倣)」小説の短編集です。
物語の舞台は昭和12年の大阪。老舗薬種商の「鴇屋蛟龍堂」は元祖と本家に分裂、お互いをにらみ合うように建っていました。両家の争いが惨事から大事件に発展し、ついに若き名探偵・金田一耕助が真相解明に乗り出します。もう一人の名探偵・明智小五郎も同じ事件に興味を持ち、現地に向かいます。ラストはあっと驚く仕掛けになっており、両探偵ファンの私は思わずニヤリとしてしまいました。
ドラマの題名は「金田一耕助VS明智小五郎」と両者の名前が逆になっており、金田一を山下智久、明智を伊藤英明が演じます。お2人がどのような名探偵を演じられるのか楽しみですね。原作を先に読んだ私は「この部分はどうやって映像化するのだろう?」などと早くも期待しています。放送日未定ですので、首を長くして待ちましょう。
『探偵はひとりぼっち』(ハヤカワ文庫)
続いては東直己著の『探偵はひとりぼっち』です。札幌はすすきのを舞台に活躍する探偵シリーズの第4作目。痛快なハードボイルド作品は男性に人気があります。みんなの人気者だったオカマのマサコちゃんが何者かに殺害されます。若い頃にマサコちゃんと愛人関係だった代議士が、スキャンダルを恐れて殺害したのではないかという噂が流れ、探偵の「俺」は調査に乗り出します。
映画の題名は「探偵はBARにいる2」となっており、2011年に公開された「探偵はBARにいる」(原作は『バーにかかってきた電話』(ハヤカワ文庫))の続編です。主演の探偵役は北海道出身の大泉洋。その相棒を務めるのは松田龍平です。前作を観ましたが、2人の掛け合いもさることながら、アクションシーンが文句なしにかっこ良く、大泉洋の新たな一面が垣間見えたのが印象的でした。
原作の探偵とはイメージは違いますが、今回も大人の男性の魅力がたっぷり詰まった作品になること間違いナシです。映画の公開は5月ですので、原作未読の方はお早目にどうぞ。
『二流小説家』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
最後は海外作品から、ディビッド・ゴードン著の『二流小説家』です。デビュー作であるにもかかわらず、アメリカで歴史と権威のある「探偵作家クラブ最優秀新人賞」にノミネートされたという傑作です。日本国内でも「このミステリーがすごい! 2012年版(海外編)第1位」「週刊文春ミステリーベスト10 2011年(海外部門)第1位」「ミステリが読みたい! 2012年版海外編(第1位)と、海外のミステリ部門で初の3冠達成の快挙を成し遂げた作品でもあります。
獄中の死刑囚より告白本の執筆依頼を受ける主人公。「一流になれるかも」と期待した彼は死刑囚に会いに行きますが、告白本の執筆条件にあることを要求されます。しぶしぶ承諾し、執筆活動を開始するとともに殺人事件に巻き込まれていくのです。
そんな大注目の作品が今夏、映画『二流小説家』として6月15日(土)に公開されます。主人公の売れない小説家を演じるのは上川隆也。今から公開が楽しみですね。
原作を読んでから映像を見るか、映像を見てから原作を読むかでだいぶイメージが変わると思いますが、今回選んだ作品はどちらも楽しめること間違いなしです。ミステリファンの方は是非ともどうぞ。
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(文/六島京)
六島京秋田県出身、京都在住。臨床検査技師免許を持ち、某法医学教室にて解剖補助の経歴を持つ。推理小説、京都、B'zをこよなく愛し、推理作家を目指して奮闘中。尊敬する推理作家は横溝正史、江戸川乱歩、有栖川有栖、綾辻行人。