現在、高血圧症患者数は潜在患者も含めると日本に4,300万人と推定されています。しかし、このうち実際に治療を受けて血圧をしっかりコントロールできている人はわずか30%未満の1,200万人(※1)といわれており、その原因のひとつとして自覚症状がないことが挙げられます。そもそも自身の高血圧症を認識していないばかりか、健康診断などで指摘されてもそのままにしている方も。
しかしながら、高血圧症は日本人の三大死因である脳卒中や心臓病など、生命に関わる病気を引き起こす最も主要な要因となり、放置すると重大なリスクになる可能性があります。
今年4月に国民の健康増進を図るために厚生労働省により開始された「健康日本21(第三次)」(※2)では、食塩摂取量が第二次における8g/日よりも、1g少ない7g/日に目標が見直されました。また、日本高血圧学会では高血圧症患者さん向けの目標量をさらに厳しい6g未満/日(※1)としています。
今回開催となった「塩対応食堂」は、来たる5月17日の世界高血圧デーを前に、高血圧症の方、およびそのご家族や関係者、そして健康に関心のある多くの生活者の皆さまに、高血圧治療における「生活習慣改善の重要性と正しい知識」について理解を深めてもらい、疾患啓発を目的としています。
そこでイベントでは、1食あたり2g未満に対応した減塩料理をふるまうキッチンカーを3日間限定でOPEN。高血圧治療補助アプリを体験してもらうとともに、アプリを通して自身の塩分摂取レベルを認識してもらった上で、塩対応メニューを楽しんでもらおうというものです。“塩対応”どんぶりは、塩分量:1.47gの三食そぼろ丼、“塩対応”うどんは、塩分量:1.92gの塩分0の麺を使用することで塩分量を大きく下げています。
今回提供される塩対応料理は、食を医学的な観点から研究され、レシピ本も複数出版されている伊藤明子先生に開発依頼したもの。また、監修いただいたのは日本高血圧学会 減塩・栄養委員会委員である日下美穂先生。日下先生は普段より食事や料理などを通してさまざまな減塩活動の取り組みをされています。そして、今回の啓発活動の趣旨に賛同され、塩対応料理の監修を担ってもらったものとなっています。
世界高血圧デーにあわせて週末にかけて開催される「塩対応食堂」。気になる症状がないとついつい放置してしまいがちな高血圧ですが、潜在的に患者予備軍が多いということや日常のちょっとしたケアを知る良い機会を創生しています。実際に血圧を測定してみたり、普段の食生活に関する質問に答えることでアプリからのフィードバックをデモ体験できたりと自分自身の高血圧危険性を知ることができます。
また、減塩食を「塩対応料理」と名づけることで、「塩対応食堂」というネーミングも効いています。“塩対応”、一般的に そっけない、愛想のない、冷淡な接し方を指す言い方を想起させながら、今回のイベントでは高血圧のための減塩対応というちょっとした逆転の効果で、イベントの詳細を知らずに通りがかった人にもリーチするフックとして機能するアイデア施策がありました。
・※1参照元:高血圧治療ガイドライン2019(日本高血圧学会)