■景気悪いということに自信をもっていきましょう(笑)

 

菊地 よしもとさんの世代で、現役で書いている女性は少ないですよね。

 

よしもと 誰だろう……。小川洋子さんとか?

 

菊地 失礼ながら知りません。実はワタシ、今の日本の国文学はほとんど読まないです。売れてるエンタメ……村上海賊の娘。とかも読んでないんですよ。テレビでちょっと内容を見たら、なんか、兄貴(作家の菊地秀行)の小説を、時代考証をしっかりやって書きました。みたいな感じがしたんで、「時代考証かあ……真面目で良いけどなあ」といった感じで。知っているのは、水村美苗さん、江國香織さん。全然読んだことありませんが、エンターテイメントだと湊かなえさんも同世代ですかね。映画で見るので、原作者として。

 

よしもと 井上荒野さんも同じくらいかな。皆さん、強い。

 

菊地 一貫しているのはバブル感ですよね。

 

よしもと そうですか? 私なんて、こんなエコロジカルでサスティナブルな感じなのに(笑)。

 

菊地 どっちの方向にいっても、バブル感から逃れられない方ばかりですよ。バブルはヤバいですよ。島流しの刺青ぐらい消えないですよ。

 

よしもと ああ、そうですね。常に己を笑うというかな。ちょっと客観的になってしまう。

 

菊地 セルフパロディしてしまう感じです。あとやっぱり、どんなに深刻だったり、壮大だったり、人類愛的に泣かせたり、年齢的に鬱的になったりしても、結局、軽い躁病(笑)。

 

よしもと それも関西の人の感じとは違うんですよね。(町田)町蔵みたいに、根本的に自分を笑うことはできないんです。町蔵のあの感じはすごい。


 

菊地 たしかにそうですね。一種の狂気ですよね。むかーーーしタモリ倶楽部かなんかに出た時に「昔はパンクロッカーで、ライヴ中に飛んできたハエを食べたりしてたみたいですね」とか言われて、憤慨して「いやあ、僕はただ、演奏会……コンサートをやって、そこで音楽家として普通に振る舞っただけですよ! 野蛮な人間ではないです」みたいなことをガチで言ってて、ああ、こういう人が小説書けるんだと思いました。ワタシも観に行きましたけど、あれは「演奏会」なんかじゃないですよ(笑)。

 

よしもと 町蔵はもともと、書くことに向いていたんじゃないかな。INUの歌詞の98パーセントくらいは山崎春美さんが書いていた気がするんですが。作風から見るに。だから町蔵には特に言いたいことはなくて、ジョニー・ロットンみたいな人なのかなと思っていたんです。ところが、実はすごく書く人だった。分量もすごい。

 

菊地 時代小説がすごいですよね。一冊読んだだけですが。