菊地成孔(著者) のコメント

userPhoto 菊地成孔
(著者)

>>7

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 内容が多岐に渡り、全てにお答えすることはできかねるのですが、端的に、実温度のことではなく比喩表現としての「HOT」と「COOL」(故ジェームス・チャンスは「あなたにとってCOOLってどういう事?」と問われ「みんな使いすぎの言葉」と答えました)は、いつ、どうしてそうで、そうであるとどういう意味なのか、ということが決まってくるわけですが、いずれにせよ、時制は強く、発生に近いまで現在です。

御説の通り、リンチや、ある時期のポランスキーに見られる冷たさの質は、遺体の温度感と無関係ではありません。現在は、熱い(=エモい)、温い(=中火)、冷たい(=クール)の三角形が、なんとなく漠然と現在に置かれていますが、ストロースの料理の三原則(生、加熱、腐食)も自制と分かち難く結びついていたように、現代は「冷飯(「冷やした飯」ではなく、放置されて温度を失った米飯)」のが好き。とか、のびたラーメンが好き。とか、火を消してからの鍋や焼き肉でないと食えない。といった、散見される価値観がもっと拡大すべきだと思います。

 ゾンディはご指摘の通り、反復の追求者でもある、レオポルド・ゾンディのことです。ゾンディは反復を死への欲望と規定しました。「天使乃恥部」は、聴き手の聴取時間が円環を閉じるように設計されています。終結のない予兆の連続で、時間感覚の潰乱は、かなり設計的に実行されています。電化の効果についてはさまざまな評価がありますが、単なる表層的な類似としても、「ツインピークス」の赤い部屋(やたらとオクターバーが使われる)だという指摘が多く、それは表層の類似だとしても正しく、「伝わっている感」が、この20年で大幅に発育している実感があります。

 

No.11 2日前

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