菊地成孔(著者) のコメント

菊地成孔 菊地成孔
(著者)

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 シネコンに否定的な人は、こうやってジャームッシュ映画が、ジャームッシュもアメリカンインディーフィルム史も何もへったくれもない、無教養な観客(←僕はこの人たちを否定しません)が、例えばこういう作品を「ツマンネ」とかいってしまう無慈悲さに対する恐怖や脅威だと思います。あの「勝手にしやがれ」だって、「芸術家がクライムアクションを撮ろうと思った結果、とんでもないのが出来てしまった」案件ですからね。

 タラのあれは、本当にすごいな、ジョン・ケージとかそういうのに近い、コンセプチュアルアートみたい。と思っています。あんだけ「意外なオチ、どんでん返し」について、あらゆるトライ&エラーを繰り返した、劇作家的な属性の強いタラが、とうとうここまで来たか。という、「4分33秒」みたいなオチで、しかも、全く違和感も雑味もなく、単に嬉しい。という(笑)、そこがおそるべきところだと思います。瀧本誠さんと話した時、瀧本先生が、あの映画を「オチは見ていない(目を隠していたとかではなく、見ても尚、史実が描かれていると信じている)。そのぐらい、シャロンテートが惨殺されたという事実が好きすぎる」という事に、辟易寸前の関心をしましたが(笑)。

 日記本編に書き忘れrてましたが、ジャームッシュのゾンビは、ゾンビの定石を外して、「生前に依存していたものを、ゾンビになっても探し求めている(のもいる。そうじゃないのもいる。というヌルさ笑)。という設定があって、コーヒー好きとかファッション好きとかがゾンビになると、、、、という感じなんですが、涙が出るほど面白くないし、何より、それによって、もう70にならんというおじいさんが、街角でみんながスマホを一心不乱に見ていて、ゾンビみたいだ。あいつらは「スマホゾンビだ」という揶揄の言葉ありますが、それをそのまんまストレートに皮肉りたくてやってんの笑。

 そんな、今更「みんなスマホ見過ぎ」って、映画作ってまで訴えることか?それだったら自分がゾンビやったほうがはるかに面白いし、批評性が担保されるんじゃないの?という流れで出た話ですね(笑)。何れにせよ、見てみてください。「パターソン」見て退屈した人(みた人全部ですが・笑)こそ、見るべき映画です。



 

 

No.9 58ヶ月前

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