菊地成孔(著者) のコメント

菊地成孔 菊地成孔
(著者)

>>2

 詰まるところ、プロパガンダの話なんですよね。プロパガンダに対する20世紀の総括っていうのはもう使えないですから、今、言語化し、客観化した方が良いと思うんですよ。

 「じゃあお前、筒井康隆の小説はプロパガンダだっていうのかよ?」っちゅう話ですが、チャップリンは、ヒトラーを「殺人狂時代」で批判した時に、「すべての映画はプロパガンダだ。ラブストーリーは愛のプロパガンダだ」と言いましたが、まあそれともまたちょっと違うんですよね。

 「千と千尋の神隠し」を、「若い母親」が熱狂した時、「ああ、これが純粋プロパガンダだな」と思いました。「純粋プロパガンダ」というのは、見るものの政治性を見えなくしてしまう。ただそれだけの力で、その先がないものです。ただ魅力的で、それ自体がめちゃくちゃ売れるけれども、ナチスのプロパガンダとかとは違うという感じで。

 「夏樹先生、いいんですか女はバカで感情的だ、ぐらい欠いてある小説に熱狂して笑」と言ったら「男もギタギタにやられるからいいんです!!笑」と、元気にお答えになったので、一瞬納得しそうになってしまいました笑。

 僕は20世紀みたいに、プロパガンダを脅威に思う、とかいう話がしたいんじゃなくて、また、クラカウアー時代の「プロパガンダには、人々を熱狂させる要素がある」とかいう話とも違って、まあ結局アンビバレンスですね。ご説にあるバイデンに投票。のことですが、そもそもアンビバレンスは精神分析学の用語です。SNSは、ちょっと前まで、悪いやつを消せる。と、特に根拠もなく思い込んでいました。が、結局、消すことは出来ず、ヤバい人を押し上げる力が証明されてしまった。これだけでも、プロパガンダについて落ち着いて考え直すべきだと思いますし、あらゆるエンタメに対しても然るべき形で処すべきだと思います。

No.5 1ヶ月前

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