アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門メールマガジン

アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第61号(2015/3/13号/月2回発行)

2015/03/13 23:14 投稿

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 ご縁がありまして『湯浅政明のうすい本』『梅津泰臣のうすい本』をご恵贈いただきました。どちらも想像に違わぬ濃い出来栄え。
 『湯浅政明~』は「湯浅ユニバース」をぎゅっと濃縮したような1冊。奇想の系譜に乗っかりそうな内容です。
 『梅津泰臣~』は、映画企画「キス アンド クライ」のキャラクターとイメージボード。先日、梅津監督にお話うかがった時に『A KITE』のころ意識していたアクション映画の監督の一人に、ポール・バーホーベンの名前があり、いろいろ腑に落ちた感じがあったのですが、そういう視点でみていくと、また新鮮に読める感じです。インタビューで「原点に還ってまた『A KITE』のようなものをやろうと考えている」というお話が出ましたが、それがこの「キス アンド クライ」だとのこと。
 どちらも1000円ですので、迷っている人は買っちゃうが吉と思います。
 というわけで、いってみましょうか。

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1.最近のお仕事紹介
2.Q&A
3.前回の「アニメの門チャンネル」
4.不定期アニメ日記
5.お蔵出し原稿
6.次回予告

最近のお仕事紹介

1.朝カル講座「アニメを読む」(東京)
 朝日カルチャーセンター新宿教室で第三土曜18時より行っている講座「アニメを読む」ですが、3月は次の通り。
  3月21日 『たまこラブストーリー』
 4月以降のラインナップは次の通りです。大河内さんゲストの「脚本について」は副題「プロットを書いてみよう」として、お話作りを体験してもらうワークショップです。
  4月18日 特別講座「脚本について(仮)」 ゲスト講師 脚本家・大河内一楼
  5月16日 アニメの可能性(1)『安寿と厨子王丸』『空飛ぶゆうれい船』
  6月20日 『ねらわれた学園』
 https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/6866f63b-7c13-028b-5f80-54c9f8c3c91c

2.栄・中日文化センター
 4月25日15時より、栄・中日文化センターで「アニメを読む」を行います。お題は『新世紀エヴァンゲリオン』(TVシリーズ&旧劇場版)。東京以外での講座は貴重ですので、中京地区の皆様は是非おこしください。終わった後は有志で簡単な懇親会も行います。
 http://www.chunichi-culture.com/programs/program_161132.html

3.SBS学苑パルシェ校
 5月31日10時半より、静岡のSBS学苑パルシェ校でーで「アニメを読む」を行います。お題は『新世紀エヴァンゲリオン』(TVシリーズ&旧劇場版)のお話しをします。レジュメは中日文化センターのものと同じです。エヴァ・イヤーですから……。
 http://www.sbsgakuen.com/gak0130.asp?gakuno=2&kikanno=166173

4.各種原稿の掲載について
・3月10日発売の『アニメージュ』4月号で、『ユリ熊嵐』について幾原邦彦監督にインタビューしています。
・3月10日発売の『ニュータイプ』4月号で、吉浦康裕監督+立川謙監督の対談を担当しています。30周年記念企画の一環です。
・3月中旬発売の『ユリイカ 2015年4月増刊号』総特集・2.5次元で、2.5次元というキーワードから考えるキャラクター論を書きました。


Q&A

「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。
あるいは、アニメの門チャンネルの有料会員は、アニメの門チャンネルページの掲示板サービスが使えますので、そこに質問をしていただいてもよいです。メルマガの下にあるコメント欄でも結構ですよー。
 よろしくお願いします。


前回の「アニメの門チャンネル」

 前回のアニメの門チャンネルは、小原篤記者@アニマゲ丼とライター小川びいさんをゲストに『花とアリス殺人事件』について語り合いました。
 いつもならだいたい話した内容のいくばくかは覚えているのですが、今回は話のテンポがはやくて、すでにいろいろ記憶があやふやな状態で……。
 3人とも総じておもしろい映画であることは一致。ただ、アリスと偶然知り合った老サラリーマンと一緒にうろうろするくだりは、小原記者は「不要と思った(監督取材で存在理由には納得)派」で、藤津・小川は「必要派」でわかれました。
 一方、花を演じた鈴木杏の声の低さについては小原・藤津が「気にならない派」で、小川さんは「さすがに低すぎ派」でした。
 制作手法もおもしろいものであることは一致しつつも、それをとらえるかは微妙に違いがあったりして。冒頭の2階から落ちるアリスのスローモーション演出は、小川・藤津が「気になる」、小原記者が「気にならない」。ただ、作画協力でクレジットされた「磯光雄さんが原画をやっていたとするならどこか」は3人とも予想が一致してました。(中盤のお父さんと会ってタクシーを追いかけるまで)。
 果たして真相はいかに……。


不定期アニメ日記

 冒頭でも書きましたが実写版『KITE』が公開ということで、梅津泰臣監督にインタビューをしました。これは次の月刊宝島の僕のコラムのコーナーに掲載されます(文字数が700wなのでおもいっきり圧縮してありますが)。
 で、その実写版『KITE』ですが、結構おもしろいです。素晴らしいかと聞かれれば欠点もある(演出のテンポがもたる感あるのと、アカイの性格にどこまで説得性があるかとか)のですが、OVA『A KITE』らしさはかなり受け継いでいるのと、南ア・ヨハネスブルグでロケしたという荒廃した町並みが、映画に説得力を与えています。予算がなくて大きいアクション(OVAのようなタンクローリー大爆破とか)は全然ないのですが、そこは工夫で乗り切っている感じで。
 『A KITE』らしい点をあげるとまず名前。メインキャラ3人が、サワ、アカイ、オブリとOVAを踏襲しています。さらにサワのイヤリングが両親の死の思い出とつながっているという仕掛けもちゃんとある。着弾後に爆発する銃弾もちゃんと登場します。
 アカイとの関係(実写版では、肉体関係はありませんが)が凧のようである(だからタイトルが『A KITE』)というのもちゃんと押さえられています。
 演出面でも冒頭のエレベーターの中でサワが仕事をするところ、潜入した先のトイレでターゲットとやりとりをするところなど、かなりOVAを意識しています。
 というわけで、ご興味あれば見て見るのも楽しいと思いますよ。ただたぶん一番いい出会いは「テレ東の昼間に放送されているのを偶然見てしまう」かもしれません。そういうテイストの映画なのです。


お蔵出し原稿

 金曜日に『かぐや姫の物語』が放送されtるということで、『かぐや姫』関連の原稿です。ブログにもアップしましたが、こちらでもどうぞ。
 『ユリイカ 2013年12月号 特集=高畑勲「かぐや姫の物語」の世界』に寄稿した「たけのこの「ふるさと」」という原稿です。〆切りの都合で試写で1回見ただけのわりには、しっかり読めている(後で映画を見直しても、あまり考えに違いがない)原稿だと思います。

たけのこの「ふるさと」

 高畑勲監督は『かぐや姫の物語』の前に一度、かぐや姫を画面に登場させている。
 前作『ホーホケキョとなりの山田くん』での1シーンだ。
 『となりの山田くん』はアヴァンタイトルでキャラクターの紹介を済ませると早々に、父たかしと母まつ子の結婚式から始まる、通称“ボブスレー編”の開幕となる。
 “ボブスレー編”は、いしいひさいちの原作に寄らず、ビジュアルのおもしろさを盛り込むことを主題にした一連のシーンのことだ。ここでまず描かれるのは、山田家がいかにできあがってきたかの過程である。
 ウエディングケーキをボブスレーでさっそうと滑り降りていったたかしとまつ子は、海を乗り越え、キャタピラカーでやがて一面の畑へとさしかかる。畑に植わったキャベツから取り上げられているのは、赤ん坊だ。空を見上げれば、コウノトリも赤ん坊を運んでいる。どちらもヨーロッパの伝承に基づいた描写だが、たかしとまつ子はここでは赤ん坊を授からない。二人はヨーロッパ人ではないからだ。
 二人が子供を授かるのは、川と竹林だ。
 カットが変わり、たかしとまつ子は水墨画で描かれた川を小舟で下っている。すると川上から、大きな桃が流れてくる。たかしが刀で切ると、そこから赤ん坊ののぼるがでてくる。続けて、小舟は水に浸された竹林の中を進み、その中に竹が一つ光っている。その竹を切ってみれば、その中には、妹のの子が十二単にくるまれてほほえんでいる。
 昔話になぞらえて語られる、家族の歴史。親から子供、子供からその子供へと語り継がれてきた昔話は、我々の中に刻み込まれアイデンティティーの一部となっている。

 

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