アニメの門メルマガ、今号で120号となりました。スタートからまる5年が経過したことになります。ここまで継続できたのも、チャンネル会員のみなさんのおかげです。どうもありがとうございました。そして、これからもアニメを楽しむためのおもしろい話、役立つ情報を発信していきたいと思っておりますので、よろしくお願い致します。
そして9月1日の次回、アニメの門チャンネルは「アニメと女子 時代の転換点」と題して、女性ファンがどんな作品に反応し、いつから“ユーザー”として発見されたかなどを編年体で追っていきます。ゲストはアニメジャーナリストの渡辺由美子さんです。
では、今回もいってみましょう。
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1.最近のお仕事紹介
2.Q&A
3.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
4.不定期アニメ日記
5.連載一覧
最近のお仕事紹介
1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
9月16日 アニメは戦争をどう扱ったか
『桃太郎海の神兵』から『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』まで
【受講申込】
10月21日 『東京ゴッドファーザーズ』(今敏監督)
11月18日 作画を体験しよう(特別講師:アニメーター・演出、数井浩子さん)
※簡単な作画に挑戦してみる予定です。
12月16日『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(髙山文彦監督)
【10~12月受講申込】
2.7月と8月のSBS学苑
9月24日の「アニメを読む」は『交響詩篇エウレカセブン』を取り上げます。【受講申込】
3.9月のオタクの学校@浅草模型塾
9月30日の「オタクの学校」で取り上げる作品も『交響詩篇エウレカセブン』です。こちらは予約はまだできません。
Q&A
「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。
連載「理想のアニメ原画集を求めて」
文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)
第48回『冴えない高瀬の仕事集』
この本は、つい先日開催された2017年夏のコミックマーケットで頒布された高瀬智章さんの同人誌です。
高瀬さんは、キャラクターデザイナーとしても『冴えない彼女の育てかた』や『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン』などの作品で有名ですが、原画マンとしても実力派で、『おおかみこどもの雨と雪』では作品のクライマックスにあたる、台風の中での草平と雪の教室のシーンを手がけられていました。
今回の本は、代表作である『冴えない彼女の育てかた♭』と『Occultic;Nine』での作画監督や総作画監督としてのお仕事を1冊にまとめたものです。
高瀬さんのお仕事をまとめた本は、過去にも『冴えない彼女の作りかた総作画監督修正集』がありました。こちらは『冴えない彼女の育てかた』1期の本で、アニプレックス+の通販やイベントなどで販売されました。高瀬さんのお仕事をまとめた本としては、もちろん楽しめる内容なのですが、原画集として見るとなかなか厳しい作りの本でもありました。
A4の縦型の本なのですが、その縦長のページの中に横長の修正原画の紙が掲載されています。縦長のページに横長の絵が掲載されるので、そのまま配置すれば上下に大きな余白ができてしまいます。この本では、主に1ページに1カット分の絵を掲載する形式を取っており、その結果、小さい絵が1枚だけ掲載されたページが多い本になってしまっていました。
アニメの絵は、ビスタサイズが基本形となった今では、カメラワークがない限り、基本的に横長の用紙となります。現在、アニメ制作で使われている用紙は、だいたいA4の大きさと考えて頂けると分かりやすいです(劇場作品や作品の傾向によっては、大きな紙を使用することもあります)。
この本はA4サイズでしたので、そのまま横にしてみると、掲載されている絵の実寸に近い大きさといえます。一般的に本の形は縦長が多く、アニメの原画集もほとんどは縦長で、その中に横長の絵をどう掲載するかは、アニメ原画集の持つ大きな課題といえます。
いままで、このコラムの中で紹介してきた原画集も、それぞれに工夫を重ねて、できるだけ多くの絵を掲載できるように苦心している様子が伝わってくるものがありました。『冴えない彼女の作りかた総作画監督修正集』に掲載されている絵は誌面上ではB6ほどの大きさで、A4のページに縦に2枚重ねられるサイズです。実際、縦に2枚掲載されているページも少なくありません。それならば、もう少し全体の絵の掲載量を増やしてほしい、と思うのが正直な感想でした。
別の同人誌で見たことがあるのですが、同じように修正原画を掲載している本で、本自体がB6サイズのものがありました。同じく1ページに1枚ずつ掲載していく形式でしたが、これはこれで見やすく手に取りやすく、よい形式の本だなと思ったことがあります。
最近でこそ、実物大に近いサイズで原画を掲載する本も増えましたが、本の中にどのような大きさで絵を掲載するかは、多くの枚数を同時に掲載しなければいけないアニメ原画集の持つ大きな課題です。自分は、まだ見たことがありませんが電子書籍の原画集などでは、その点に充実した物があるのだろうと思います。
ところで、原画集の話とは直接関係ないのですが、アナログにはアナログ、デジタルにはデジタルの利点も欠点もあるものです。現在の映像業界は、さらなる高画質化に向かっています。TVで4K放送がスタートしたり、映画でもIMAX等が話題ですが、先ほど書いたようにアニメ制作で描かれる絵はA4用紙ほどの大きさです。
劇場作品ともなると大きな用紙で描く場合もありますが、もちろんスクリーンに投影される時には描かれた絵の大きさの何十倍、何百倍ともなっています。家庭用TVやモニターも大画面化が進んでいます。
アニメ制作が、その変化にどう対応していくのかは、今後のアニメ業界が直面する大きな問題となると思います。それらをアナログ作画で解決するのか、あるいはデジタル作画で対応していくのか、未知数であるという印象です。デジタル作画で作業する際の解像度も、大きな問題になるでしょう。
そうした変化は、もちろん個人単位でもあって、高瀬さんのお仕事も『冴えない彼女の育てかた』1期では、紙に鉛筆で描かれたアナログでの作業。2期の『冴えない彼女の育てかた♭』と『Occultic;Nine』では、フルデジタルでの作画となっています。
ですので、この『冴えない彼女の作りかた総作画監督修正集』と『冴えない高瀬の仕事集』を見比べてみると、高瀬さんやアニメ業界の作業面での大きな変遷を感じることもできます。
話がそれてしまいましたが、この『冴えない高瀬の仕事集』では、『冴えない彼女の作りかた総作画監督修正集』に感じた掲載量の不満は解消され、大変満足のいく内容となっていました。210ページの本全体に、びっしりと詰め込まれた高瀬さんの絵を浴びるように見ることができます。
今となっては、『冴えない彼女の作りかた総作画監督修正集』も高瀬さんのアナログで描かれた絵をフルカラーで見ることができる本であり、合わせてみることで貴重な体験となっていると思います。
高瀬さんは絵の技術が非常に高い方で、人物や空間を立体的に描ける高い画力を、携わった作品の映像や原画集を見ることで感じられます。
キャラクターデザインとして参加した『冴えない彼女の育てかた』シリーズは、美少女アニメ特有の女性の体を主観的に描いた様なカメラワークが、『Occultic;Nine』は奇抜なアングルが多用される作品でした。
『冴えない彼女の育てかた』や『Occultic;Nine』は、それぞれ絵柄として違うものですが、どちらにもキャラクターの周囲をカメラが回転しているような映像などがあり、精度の高い技術が必要とされる映像でも、高瀬さんの確かな画力を感じることができます。
もちろん、そうした高い画力を持ったアニメーターは昔からいましたが、高瀬さんはそうした立体感を『冴えない彼女の育てかた』のような絵柄でも発揮できるのが、また凄いところだと感じます。
210ページとなかなかに分厚い本ながら、各ページにコメントが細かく付いており、読み応えも十分です。コメントの中で、いい仕事をしていた参加アニメーターの名前を覚えていってくださいと、何人も挙げられているのが印象的でした。
高瀬さんは、アニメーターとして今後のアニメ業界を牽引していくことになる才能を持った一人だと思います。その仕事をこうして1冊の本として見られる原画集というのは、良いものですね。
『冴えない彼女の作りかた総作画監督修正集』での不満解消もあり、一段と楽しく読める1冊でした。
(『冴えない高瀬の仕事集』/高瀬智章・サトステ/2,000円)
不定期アニメ日記
アニメの話題ではないですが、「映像を読む」上で大事な要素をはらんでいるなと思ったので、炎上像粗動で話題になった「牛乳石鹸」のCMについて考えます。
公式にあげられた動画は以下のリンクから見られます。
【牛乳石鹸 WEBムービー「与えるもの」篇 フルVer.】
以下、コマーシャルの内容をできるだけ、想像を交えず、画面に写っているもの中心に書き記してみました。
■シーン1
マンションのゴミ集積所。スーツ姿の男が出勤がてらゴミを捨てる。橋をわたり、バスに乗って通勤する。
■シーン2(回想)
出勤しようとした時、妻が呼び止める。「帰りにケーキお願い」。カレンダーに花丸で「たんじょうび」と書かれているカットのインサート。両手にゴミを持って立っている男。「はぁい」と返事。表情変化はない。
※回想明けにバスに乗っている男のバストショット。
■シーン3
会社で仕事中の男(背中から)。上司に後輩(?)が叱られている。それを見ている男(目立った表情変化はない)。携帯に妻から「プレゼントもお願い」と連絡入る。携帯をそのまま置く。待受は子供もいる3人の家族写真。
■シーン4(回想と現在のカットバック)
男の父の思い出(セピア処理)。仕事に出かける父の背中。【現在】今の自分の背中。子供のころの男。ひとりで壁に向かっている(手にグローブ、頭に野球帽)。【現在】グローブを手にとる男。ケーキとプレゼントを持って歩いている男。立体交差の下にさきほどの後輩(おそらく)がトボトボ歩いているのを見つける。
「あのころの父とは、かけ離れた自分がいる。家族思いの優しいパパ。時代なのかもしれない。でも、それって正しいのか?」
■シーン5
居酒屋。男、後輩(おそらく)と飲んで、「オレも昔、怒られたけどね」と語る。「あ、そうなんですか」と後輩。携帯が鳴る。後輩「でなくて大丈夫ですか?」、男「うーん……大丈夫」。夜道、後輩が「先輩、今日はありがとうございました」と頭を下げる。「また、明日な」といって男、去る。
■シーン6
家の今。妻「なんで飲んで帰ってくるかな」。部屋に誕生日の飾り付けあり。うつむいている男、そのままの下向きの目線で「風呂入ってくる」という。妻「ちょっとまってまって、話終わってない…」
■シーン7(風呂)
牛乳石鹸のアップ。湯船の男。父の背中を流す子供時代の男(回想)
「オヤジが与えてくれたもの。俺は与えられているのかな。」
顔を手であらって、ため息ともつかぬ息ひとつ。
「ふと、そんなことを思った。」
風呂からあがって妻に謝る男。妻、手招きで子供を呼ぶ。子供入ってくる(寝間着か部屋着かは不明だが、明らかにパジャマという記号性は薄い服)
■シーン8
翌朝。街の遠景。ゴミ出しの音。集積場にゴミを出す男(冒頭と同ポジ)。バスに乗っている男。若干、明るい顔である。
字幕。「さ、洗い流そ。」
牛乳石鹸の説明は以下の通りです。(改行はこちらで修正しました)
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