アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門メールマガジン

アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第119号(2017/8/11号/月2回発行)

2017/08/14 09:53 投稿

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 『フェリシーと夢のトウシューズ』を見てきました。今年の2月に『アニメの門チャンネル』「海外長編アニメの世界」で映画ファン。小泉正人さんをゲストで招いた際にも、取り上げられた1本です(原題は『ballerina』)。
 リアリティラインはかなりマンガなんですが(謎特訓でメキメキ上達とか)、マンガらしくまっすぐ一生懸命なヒロインに好感が持てる楽しい1編でした。ちなみに、月影千草(『ガラスの仮面』)とミヤギ(『ベスト・キッド』)を併せたようなキャラクターが出てくるのも、おもしろ要素ですね。、配信でも話しましたが、ファンタジー要素がほとんどない3DCGアニメって珍しいですよね。
 では、今回もいってみましょう。

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1.最近のお仕事紹介
2.Q&A
3.前回のアニメの門チャンネル
4.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
5.不定期アニメ日記
6.連載一覧



1.朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
 8月19日 特別講座「編集の仕事を知ろう」
      講師:平木大輔(『NEW GAME!』『舟を編む』『月がきれい』等編集)。
      実際の作品の映像を使って編集の仕事を説明いたします。
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 9月16日 アニメは戦争をどう扱ったか
      『桃太郎海の神兵』から『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』まで
      【受講申込】

2.7月と8月のSBS学苑
 8月27日は「アニメの魅力 『ガンダム』から『おそ松』さんまで」 8月は「お試し版講座」ということで、静岡と沼津で開きます。内容は『逆襲のシャア』『秒速5センチメートル』『おそ松さん』の3本を90分でギュッと紹介します。この講座は学割アリです。
 午前10時30分:パルシェ校 【受講申込】
 午後:イーラde沼津校 【受講申込】
 9月24日の「アニメを読む」は『交響詩篇エウレカセブン』を取り上げます。【受講申込】


Q&A

「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。


前回のアニメの門チャンネル

 前回のアニメの門チャンネルは、『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』を入り口に、『ポケモン』のあゆみを振り返り、考察しました。
 『キミにきめた!』は。初登場首位で、公開週末の興行収入は約5億1600万円。仕上がりは30億円から、うまくすれば40億円ぐらいのコースでスタートしました。
 『劇場版ポケモン』の興行成績は『ミュウツーの逆襲』が70億円を超えて現在でもトップ。そこから徐々に下がって(下がってと言っても全部大ヒットといえる成績ですが)、5作目の『ラティアスとラティオス』が30億円を切ります。ここで対策(たとえば劇場での新ポケモン配布とか)が打たれ、第6作目『ジラーチ』は40億円超えに戻ります。
 このあたりから、ストーリーのドラマ性は抑えめで、広い意味での映像のスペクタクルのおもしろさを打ち出してくるようになります。そのあたりのピークが10作目で、約50億を記録した『ディアルガVSパルキアVSダークライ』から始まる「時空ポケモン3部作」(個人的な呼び方です)になります。
 それが最近はじわじわと興行収入を下げ、前作『ボルケニオンと機巧のマギアナ』は21.5億円になってしまいました。
 これは『ポケモン』という作品を長期継続させるためにとられてきた施策が、制度疲労を起こし、観客にその魅力が伝わらなくなっていたということだと思われます。
 そういう時は、この作品がどういう作品か、その作品の本質(テーマといってもよい)を考えることが、解決の正道です。
 『ポケモン』の初代シリーズ構成である首藤剛志は、その部分を非常に徹底して考えていました。その思考はWEBアニメスタイルで連載していた「シナリオえーだば創作術」で読むことができます。
 この首藤の『ポケモン』の捉え方を踏まえて『キミにきめた!』を見ると、同作が描いていることが、首藤の設定したテーマの「部分解」になっているととらえることがわかります。これはTV『ポケモン サン&ムーン』におけるリニューアルでも、同様のことを指摘することができます。
 『ポケモン』については、リアルサウンド映画部「『ポケモン』ブランドを再構築?」『アニメの門V』「アニメ『ポケモン』のテーマとは何か?」でも書いています。


連載「理想のアニメ原画集を求めて」

文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

第47回『風立ちぬ ロマンアルバム』

 ジブリ作品というと、劇場作品が公開されるたびに、絵コンテ集、ロマンアルバム、ジブリTHE ARTシリーズやフィルムコミックなど、関連書籍がたくさん出版される印象があります。
 ロマンアルバムには毎回、原画やレイアウトが掲載されており、楽しみにしているのですが、なんとも掲載点数が少ないのです……。ジブリTHE ARTシリーズでは、イメージボードや背景美術が中心となって掲載されているので、原画などもたくさん掲載されている本がほしいと長年思っていました。
 そんな中、宮崎駿監督最後の長編映画として公開された『風立ちぬ』は、ジブリの他作品の数倍の厚さのロマンアルバムが出版され、そこには大量の制作資料が掲載されていました。

 かなりの掲載点数なのですが、数えてみたところ、レイアウトや、原画、修正原画が掲載されているページが、280ページほどのうち100ページ以上もありました。掲載されている画像のサイズも大きく、1枚1枚の絵が見やすいのはありがたいところです。
 画像は、カラーページ、モノクロページとありますが、大判のレイアウトを1ページに大きく1枚掲載していたり、通常サイズのレイアウトでも、1ページに上下2枚掲載していたりと、かなり大きな掲載の仕方をしています。
 ただ、まったく不満が無い訳でもなく、スキャン時の問題なのか、それ以後の画像加工の問題なのかは分かりませんが、カラーページ掲載の原画の色味には少し違和感があります。

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 読み物としても充実していて、作品の紹介というよりは、アニメの制作工程を分解して解説する本という印象です。原画やレイアウトも、作品の素材の一部として掲載されている印象で、それを元にしてカメラワークや仕上げ処理、撮影処理などが解説されています。アニメの技術の入門書としても読める内容になっていると思います。
 そうした内容なので、アニメーターや美術の人が描いた絵が、その後どのような加工を施されてアニメ映像となるかを見比べることができ、技術に詳しくない人でも、興味を持ったり、楽しむことができる本になっています。
 普通の原画集だと分かりにくい、背景やセル部分の組み合わせなど、この本を見たほうが分かりやすいかもしれません。絵コンテや、原画集、背景美術集など、素材が集められた本の副読本として、ぜひ手にとって見てほしいです。
 1カット1カット毎を切り出し、どんな素材で出来上がっているのか、どんな素材が必要なのか、どのような画面処理がされているかが分かる内容なので、作画マニアだけでなく、演出に興味がある人達にも、演出処理という演出家職の具体的な仕事を理解する事を助ける本として、一度は目を通してほしいと思います。

 さまざまな工程に光を当てている本で、各工程の人たちのインタビューも充実しています。中でも原画として参加しているスタッフのインタビューに力が入っており、10人の原画マンのインタビューが読めます。
 分厚い本ならではのありがたいところで、インタビューにも、インタビューされている原画マンの原画の掲載にもページが多く割かれており、原画集としての見どころ、読みどころが充実している1冊だと思います。インタビューを受けているアニメーターの方々も実に豪華で、ジブリ作品ならではですね。
 また、ジブリならではの読みどころとしては、動画職にも注目されており、原画が描かれた後、どのように動画作業が行われたかもインタビューとして読むことができました。ここで、動画検査としてインタビューを受けている館野仁美さんは、現在では「ササユリカフェ」を開店しています。店内で精力的に、アニメ関連の原画展を開催されている方で、この連載でもその原画展は何度か取り上げさせて頂きました。

 個人的にうれしかったのは、近藤勝也さんの原画の掲載が多かったところです。スタジオジブリ作品で、キャラクターデザイン、作画監督として、活躍されている近藤さんですが、原画マンとしても一流で、『風立ちぬ』以後はジブリ制作のCM作品でお仕事を見かける機会も多くなりました。
 『風立ちぬ』の作中でも、近藤さんの担当された結婚式のシーンなどは、近藤さんの絵柄が前面に出ています。この本にはそのシーンの原画は特に多めに掲載されていて、見どころのひとつだと思います。
 現在、近藤さんの地元では近藤勝也さんの大々的な展覧会が開かれているそうですので、興味のある方はぜひ足を運んでもらいたいところです。

 宮崎駿監督作品のロマンアルバムもこれで最後……と思っていましたが、なんと!現在では、新作長編映画の準備に入っているとして、スタジオジブリでは、先日スタッフの募集がありました。
 作品の完成は、3年後を目標にもう始まっているようです。いったいどんな作品になるのか楽しみで仕方がないものですが、またこの本のように充実した資料本の登場も待ち遠しく思ってしまいます。
 映画の完成、そして公開を、この本を片手に、楽しみにして待ちたいと思います。

(『風立ちぬ ロマンアルバム』/徳間書店/2,808円)


不定期アニメ日記

 映画評論家の町山智浩さんが、ラジオ番組(TBSラジオ『たまむすび』)で、「ネットフリックスが、アニメ業界に、通常の何十倍もの予算を提示している」(要旨)ということを話されたそうです。これがだいぶバズったようですが、ラジオの内容を書き起こされたものを読んでみますと、いろいろ飛躍が大きいお話で、根拠に欠ける内容でした。

 

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