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藤津亮太のアニメの門チャンネル

アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門メールマガジン

アニメ評論家・藤津亮太のアニメの門ブロマガ 第108号(2017/2/24号/月2回発行)

2017/03/01 02:12 投稿

  • タグ:
  • アニメ
  • 言論
  • 藤津亮太
  • りょっぴー

 2月20日に『声優語』出版を記念して、ジュンク堂書店池袋本店で音響監督・斯波重治さんを招いてのトークを行いました。満員のご来場どうもありがとうございました。
 2月25日には朝日カルチャーセンター新宿教室で幾原邦彦監督を招いた『僕はこんな作品を見てきた。1995年とメディアの変遷』を開きました。こちらは上智大学講師の上田麻由子さんと一緒に聞き手を勤めました。こちらも満員で、ご来場どうもありがとうございました。
 どちらも非常に貴重なお話がうかがえたと思います。楽しんでいただけたのならなによりです。
 2月は通常の講座も含め毎週何かありましたが、それもこれで一段落です。

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1.最近のお仕事紹介
2.Q&A
3.連載「理想のアニメ原画集を求めて」
4.お蔵出し原稿
5.連載一覧


最近のお仕事紹介

1.1月期の朝日カルチャーセンター新宿教室「アニメを読む」(東京)
 3月18日は第二期が放送中の『昭和元禄落語心中』です。第一期を中心に、作品の魅力に迫ります。【3月予約】
 4月期は以下の通りです。
 4月15日 特別講義「シナリオのできるまで」ゲスト講師:大河内一楼
      シナリオ作りを体験するワークショップです
      【4月期予約】
 5月20日 『源氏物語』『源氏物語千年紀 Genji』
 6月17日 『おそ松さん』

2.3月のSBS学苑パルシェ校&遠鉄校「アニメを読む」
 3月12日10:30よりがパルシェ校で、13:30より遠鉄校で講座を行います。お題はともに『新海誠作品の魅力』です。CREA3月号で取材した時のお話など交えつつ解説できれば。
 【パルシェ校予約】 【遠鉄校予約】

3.3月のNHK文化センター青山教室(東京)
 3月18日13:30からNHKカルチャー青山教室で開催の「アニメを読む」は『アイアン・ジャイアント』です。ブラッド・バード監督の初監督作品、『アイアン・ジャイアント』の魅力をいろいろな角度から考えます。
 https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1088222.html


Q&A

「なぜなにアニ門」で質問を募集しています。「件名」を「なぜなにアニ門」でpersonap@gmail.comまで送って下さい。文面にハンドル(名前)も入れてください。


連載「理想のアニメ原画集を求めて」

文・水池屋(コーディネート:三浦大輔)

第36回『柴田勝紀2016』①~③

 『柴田勝紀2016』は、その名の通り、アニメーターの柴田さんの2016年のお仕事をまとめた原画集同人誌です。1冊約80ページの本に、2作品の資料を収録。3冊セットで、計6作品分のお仕事が掲載されていました。
 2016年の柴田さんのお仕事は、単価で引き受けるかたちだったそうです。アニメ作業における「単価」は、動画の場合は1枚いくら、原画の場合は1カットいくらと、仕事内容によってお金が発生する単位が違うのですが、会社や作品によって、それぞれ決められた金額があります。もちろん、単価で受けるお仕事以外にもお金が発生する状況はあるのですが、アニメ業界では基本的に単価という条件の元に仕事をしている場合が多いと思います。『柴田勝紀2016』では、そうした1カットいくらという単価で引き受けたお仕事が掲載されているようです。

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 では、単価とは一体いくらなのでしょうか?
 TVアニメの原画1カットの作業料金は、おおむね4000円前後になると思います(この本には3800~4500円と書いてあります)。先ほども触れたように、単価の概念は作業内容によって変動しますが、原画作業の場合は基本的に1カット単位で発生します。しかし、ここからさらに単価が分割されるのが現在のアニメの制作状況です。
 この連載でも何度か触れていますが、原画の作業は、現在はレイアウトと第二原画の二つに分かれています。そして、レイアウトの作業にはレイアウト、ラフ原画(または第一原画)などが含まれます。一方、第二原画は、演出や作画監督のチェックや修正を経て、返ってきたラフ原画を清書する作業です。1カット4000円は、この二つの作業全てを終えた場合の労働単価となります。ですので、レイアウト、ラフ原画だけを担当した場合、もらえるお金は単価の半額。第二原画だけを担当した場合も、もらえるお金は単価の半額となります。
 この本に掲載されているのは、主にレイアウト、ラフ原画段階でのお仕事のみですので、単価2000円前後でされたお仕事ということになります。全てが全てというわけではないようですが、それがTVアニメの制作現場での作業の相場だということです。もちろん、実際の現場では、単価で受ける作業をしている方が全てではありませんので、それだけは誤解しないでください。

 実際に、この本を読んでみると、各現場で予算的な状況や制作的な状況などが違う事が分かります。作品ごとにコメントが付いており、前回の記事で少し触れた作画的なコストについて、更に踏み込んだ本となっています。
 掲載されているのは、基本的に演出・作画監督がチェックする以前のラフ原画です。完成した本編とは違うものなので、柴田さんのコメントによると、参考になるものではないとのことです。とは言え、全部で240ページものボリュームを使って、1年間という長いスパンでのアニメーターの仕事を俯瞰した内容で、興味深い本となっていると思います。
 商業出版の原画集に掲載されている絵と違って、ラフに見える絵かもしれませんが、巧い人が描いているのは見れば分かりますし、自分にとっては参考になる本でした。
様々な傾向の作品の原画を見ることができ、レイアウト、カメラワーク、ラフ原画、タイムシートも掲載されていて、原画集としても充実した内容だと思います。

 作品によって写真レイアウトや3DCGレイアウトで作業をしていることが分かったり、ラフ原画とはいえ1カットで原画30枚や70枚と言った、大量の原画が掲載されている同人誌は、なかなか見たことがありません。
 そして、原画の単価が1カット単位であることを念頭において見ると、原画を1枚描いた場合も、原画のないBGオンリーのレイアウトだけを描いた場合も、100枚描いた場合も、「1カット」と数えれば、単価は同じかもしれない状況が見えてきます。
 時間的なことについては、この同人誌の中では言及されていませんが、どんな仕事でも経費、掛かる時間、作業自体の難易度の違いは存在しています。単価という条件で仕事をしている限り、アニメ制作者にとってそれらは無視できない要素だといえます。
 アニメーターという仕事を意識させられる同人誌でした。

(『柴田勝紀2016』①~③/柴田勝紀/各1200円)


お蔵出し原稿

ユリイカの2.5次元特集に書いた原稿です。おそらく6月の朝カル『おそ松さん』は、ここから延長線上でいろいろ考察するかもしれません。

 マンガやアニメを原作とする舞台/ミュージカルを指す時に使われる「2・5次元」という言葉を煎じ詰めていくと、「キャラクター」とは何か、という問いが浮かび上がってくる。ここでは筆者の専門領域であるアニメにおいて、キャラクターとはどういう存在かを考えることから「2・5次元」というテーマを浮かび上がらせてみたい。
 スクウェア・エニックスのマンガ雑誌のCMを見たことがあるだろうか。深夜に放送されることが多い同社のCMは、アニメ化作品の主人公が、そのキャラクターとしてCMのナレーションを担当している。
 このナレーションでは、キャラクターを特徴付ける言い回しや決めぜりふはそのまま登場するが、キャラクターが自己紹介をすることはほとんどない。また、当該のキャラクターのイラスト(たとえばコミックスの表紙)などが画面に写ることはあるが、声の主がそのキャラクターであるとわかるような図像との関連づけ(口パクなどのセリフとの同期)もほとんど見かけない。同社原作のアニメの間に流れるCMだから、たいがいの視聴者はそれがどのキャラクターなのかすぐわかる、ということなのだろう。
 ここでおもしろいのは、「声(セリフ)」だけで、そのキャラクターがそれと視聴者に認識されているところにある。
 アニメのキャラクターは「図像」と「セリフ」から成立している。だがこの事例を見てもわかる通り、図像がなくても「アニメのあのキャラクターである」という認識は成立する。実は「図像」も「セリフ」もアニメのキャラクターにおいては絶対的なものでないのだ。
 押井守監督による実写映画『トーキング・ヘッド』は、監督が失踪し迷走するアニメ映画の制作現場を舞台にしている。物語の要所要所にスタッフが、自らの仕事の持論と歴史的根拠を語るシーンが織り込まれた本作は、押井流の映画論映画、アニメ論映画なのだが、劇中のキャラクターデザイナーは「遺言」の中で次のような言葉を残している。
「これで複数のアニメーターによって描かれた似ても似つかぬキャラクターが/ただ同一の音声によって演じられるだけで/いや時には声優の交代という非常事態をも受け入れつつ/疑いもなくその存在を同定される摩訶不思議」
 このセリフの通り、かなり作画が荒れたとしても視聴者はキャラクターを別人と見間違えることはない。
なぜならアニメのキャラクターの一貫性は、絵柄ではなく、「色」(視聴者はアップ時の画面占有面積の多い髪の色を手がかりにキャラクターを把握していることが多い)に代表される記号性と「声」が補い合って保証しているからである。

 

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