今回の自民党政権の役割は憲法改革、TPP加入か。 白川日銀総裁の辞任も、参議院選対策の可能性
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白川日銀総裁が、2月5日の午後10時に電撃的に辞任を発表した。
デフレ不況の元凶といわれていた日銀の金融政策への批判を受ける形での辞任は、金融権力に対する政治権力の1つの成果でもある。
とはいっても、喜んでばかりはいられないような状況にある。
それは、安倍自民党政権が、当人たちが望んでいるかはともかく、外国の意図を組んだ政策を行うために周到に作られた政権である可能性があるからである。
アベノミクスは3つの柱を打ち出している。
・金融政策→今年、買取基金を10兆円を増額させる。更に来年から毎月13兆円(短期国債10兆円、長期国債2兆円、他1兆円)を買取り基金が110兆円になるまで購入する。
・財政政策→10年で200兆円の公共投資
・成長戦略→規制緩和、企業間の競争促進
この3つの戦略の全ては、実はこの20年間、自民党と民主党が景気対策として行ってきたことだ。
しかし、それぞれがばらばらで、景気回復に至らなかったというのが安倍自民党の考え方なのだろう。
この3つを統合してこそ、消費を拡大させ景気回復の意味があると。
問題は、先月24日に打ち出された政府と日銀の金融政策がそれほど効果的ではない量的政策であるということだ。今年は10兆円しか買取基金を増加させないし、来年は13兆円を毎月購入していくといっても、110兆円で頭打ち、なおかつ13兆円のうち、10兆円は1年以内に償還される短期国債である。つまり、短期間しか通貨の量は増加せず、償還時に増加させた通貨は消滅してしまうので、長期にわたるデフレを克服するに足る強力な金融政策足りえない。
このような批判が、一部の経済学者からなされていた。
有効な金融政策が伴わなければ、財政政策をいくらやっても財政支出を行った分、銀行は貸し出しを減らし、結局市場の購買力の継続的な増加には失敗し景気回復に結びつかなかった。
莫大な財政支出は莫大な借金を残しただけになった。
その繰り返しになるのだけは何としても避けたい。
そのような中で、昨日の午後10時に白川総裁の辞任会見が行われた。任期満了より1ヶ月ほど早く退任する。
この電撃的な辞任劇の背後には安倍政権の圧力があったことは容易に察することが出来る。
それでは、何故、辞任せずとも1ヶ月もすれば任期が満了する白川総裁は突然辞めたのか。
7月の参議院選までに時間があまり残されていないという状況を見れば、理解できる。
安倍政権は参議院選に大勝利を収めたいのだ。
何故なら、自民党と保守派の長年の悲願である「憲法改革」を行うためには衆議院の圧勝だけでは足りず
参議院の圧勝も必要とされるからだ。
そして国民の圧倒的な支持率も必要とされる。
そうするには、経済を回復させ、国民の支持をえなければならない。
これこそ安倍政権が自らに課している最大の目標であろう。
今回、参議院選までに有効な金融政策を実行しそうに無い白川総裁を早く辞任させ、より強力なインフレ政策を行ってくれる人を一刻も早く選ぶために、白川総裁を辞任に追い込んだと考えるのが今のところ妥当な見方ではないか。
その背後にはアメリカや国際金融権力の意向が働いているように思える。
日本の政治と経済を考えるうえで複雑になるのは、日本は事実上独立国とはいえず、アメリカを中心とした欧米金融権力の影響下に在る国だということだ。
分かりやすくいえば「属国的立場」の国である。
その干渉を無しに政治経済の動向を考える事は出来ない。
白川総裁は国際金融権力の本丸であるBISの副議長である。
日本政府や白川氏だけ意思で総裁の辞任を決めることが出来たのだろうか?
安倍政権が出来る前までに何があったのか?
下の図を見てみたい。
一番上の図は銀行貸し出しの伸び率である。1年前から伸び続けているのが分かる。
銀行貸し出しの増加は、消費を純増させる効果がある。
二番目の図は、銀行貸し出しの、実体経済向け融資の残高である。投機的な金融経済ではなく、実物の取引が行われる実体経済向けが増加しているのが分かる。
銀行貸し出しの伸びは、だいたい、1年後に景気全体に影響を及ぼすと言われている。
そうするとこれから、実体経済の景気指数の改善が様々な統計上に表れてくる可能性が高い。
実際、有効求人倍率は増加し続けているし、鉱工業生産指数も改善の兆しが見られる。
その恩恵を受けるのは安倍自民党ということだろう。
これによって安倍政権は、世界の投機家たちによる金融経済からの支援と供に、実体経済からの景気回復の追い風も受ける可能性がアル。
三枚目の図は、私が考える安倍政権と維新の会の予定表である。
TPP交渉参加と憲法改革を唱えているのは安倍自民党と維新の会である。
この2党とも、衆議院選が始まる前から、登場が準備されていた可能性は高い。
何のために?
日本国憲法を廃棄する事とTPPに加入するためである。
日本国憲法を廃棄させ、世界に展開しているアメリカの軍事力を補完させるため集団的自衛権を日本に行えるようにする。集団的自衛権とは、自国の防衛のみではなくアメリカ軍の防衛も担うということだ。
つまり、アメリカ軍が派遣されているアフガニスタンやイラクに、日本軍も参加して戦う可能性がでてくる。
そのためには9条を何としても廃棄しなくてはならない。
そのために、小沢鳩山民主党政権を叩き潰し、管、野田政権に最悪の政権運営を行わせ、日本を過度な円高と株安に落とし込み、震災復興も遅らせた。日銀も同調してデフレ的な金融政策を続けた。
70年以上続いた日本国憲法を廃棄させる憲法改革と、関税自主権を撤廃するTPPの加入は極めて大きな政治的課題である。それを実行させる政権には国民の圧倒的な支持率が無くては難しい。
その前の政権は最悪であればあるほどよい。野田政権が最悪の消費税増税やデフレ政策を強行し、何故か与党民主党が解散を全党一致で拒否した翌日、自爆解散を行った。
その結果、当然ながら民主党は大敗北し、安倍自民党と維新の会は大勝利した。
安倍政権のもとで、経済を低迷させていた最大の要因である日銀の金融政策を攻撃させ、経済に興味のある多くの層を引き付ける。正しい政策を行わせることによって景気を回復させ、国民に絶大な支持を与える。
ヒトラーが国民から圧倒的支持を取り付け独裁政権を樹立できたのも、まともな経済政策を行い景気を回復させたからだ。
たとえ、景気が回復しても、アメリカと供に世界を侵略し、関税自主権が無くなって国家主権が更に骨抜きにされたら、一体何の意味があるのだろうか?
それこそ、ヒトラーの経済政策によって熱狂的に支持した国民がヒトラーに独裁政権を与え、自らの様々な権利を放棄してしまったかっての誤りと同じ道を辿ってはならない。
今回の白川日銀総裁の突然の辞任の背景には、このような国際的な流れも含んだ政治経済の流れが見え隠れする。
もちろん安倍政権が正しい経済政策を行ってくれれば、良いに越したことは無い。
実際の政治経済の問題は様々な勢力がせめぎあう権力の角逐の場であり、一概に断定することは出来ない。
問題は、背後に外国勢力が存在し、それによって国民が不利益になるように誘導されてしまう可能性である。
私のこの懸念が、杞憂であることを願っている。
2012年11月12日出版!
【成甲書房からの内容紹介の転載】
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