アベノミクスの財政出動はデフレ克服に効果があるのか?通貨量から見る
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アベノミクスには3つの柱がある。
1つは金融政策。もう1つは財政政策。もう1つは成長戦略である。
・金融政策→今年、買取基金を10兆円を増額させる。更に来年から毎月13兆円(短期国債10兆円、長期国債2兆円、他1兆円)を買取り基金が110兆円になるまで購入する。
・財政政策→10年で200兆円の公共投資
・成長戦略→規制緩和、企業間の競争促進
前回は、金融政策に対してお伝えした。
今回は、財政政策についてお伝えしたい。
この財政政策がデフレ克服のために有効であるかどうかは今の段階では判断できない。
その理由は、この財政政策が通貨を作ることに直結する政策かどうかと言うことである。
この20年の不況で日本政府は莫大な財政出動を行ってきた。
その結果、現在までに約700兆円の借金を積み重ねてきた。
10年で200兆円の公共事業を行ったとしても、それだけでは、今までの財政出動と何の変わりも無い規模である。
それでは、何故、今までの莫大な財政出動は景気を回復させインフレにさせることに失敗してきたのだろうか。
その理由は、
・通貨を作らない生命保険や年金基金が国債を購入しても、通貨が民間から政府に移動するだけであり、一般市場の通貨を増加させなかった。
・通貨を作ることが出来る銀行業が、国債を購入しても、ほぼ同額分、貸し出しを減少させている。
そのため、銀行の資産残高はここ10年間は殆ど増加せず、通貨を増加させることに失敗していると推測できる。
以下の図は、銀行の資産残高(上から一つ目のグラフ)と、その資産の部に含まれる「貸出残高」(上から二つ目のグラフ)、保有する証券、主に国債の残高(上から三つ目のグラフ)、日本銀行の総資産残高(一番下のグラフ)の1980年~2010年までのグラフである。
グラフを見ると総資産残高は、バブル時の1980年~91年までは上昇を続けている。貸出し残高も増加している。しかし、バブル崩壊後の92年ごろから、殆ど総資産残高は増加していない。これは、銀行が通貨を市場に供給していないことが推測できる。
その理由は、銀行の貸し出し残高が98年から減少する一方、上から三つ目のグラフの国債の購入が増加し続けているからである。その結果、民間銀行の総資産残高は、差し引きゼロで殆ど変化しなかった。
また一番下の日本銀行の総資産(一番下のグラフ)だが、これも殆ど増加していない。つまり通貨を創造できる唯一の機関である民間銀行と中央銀行の総資産が増加していないので、日本の通貨量はこの10年間は殆ど通貨量が増えていないことを推測できるのである。
通貨量を増加させなければ、長期的な消費の上昇は見込めない。財政出動を行い、発行された国債を民間銀行が購入すれば通貨を作るのであるが、一方で銀行が貸し出しを減らしているのなら財政出動の効果は一時的なものでしかない。
結局、いくら莫大な国債を発行し続けても市場の通貨量を増加させる事に失敗しているために、継続的に消費を増やすことが出来ず、消費不況を克服できず、商品が売れないために値下げを続けるデフレ不況を克服できなかったということである。
アベノミクスの財政出動がデフレ不況の克服に有効になるには以下の条件が必要である。
・国債を購入しても通貨を作らない生命保険や年金基金に購入してもらうのではなく、国債を購入することで通貨を作り出す銀行業に多くの国債を購入してもらう。
・銀行が国債を購入してもその金額分貸し出しを減らせば、通貨が減少してしまう。通貨が減少しないように、貸し出しを減らさないように工夫しなければならない。
この二つの条件をクリアすることが出来れば、財政出動によって、消費は増加し、なおかつ通貨量も上昇するので短期的にも長期的にもデフレ脱却を実現する有効な政策になりえるだろう。
現時点では、アベノミクスの財政出動がデフレを克服する本当に有効な政策だといえるかどうかは判断しにくい状況である。
先月の24日に政府と日銀で共同声明が出された金融政策では、それほど有効な金融政策とはとてもいえない内容であった。新たに任命される日銀総裁のインフレ政策を含めて、アベノミクスが上記の条件をクリアできるかどうかに注目である。
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