県は圧力に屈せず/国は“展望”なく
沖縄県と政府は4日、名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐる訴訟で、福岡高裁那覇支部が提示した「暫定和解案」で合意し、安倍晋三首相はただちに工事中止を指示しました。一時的なものであるとはいえ、新基地建設を許さない県民の世論と運動が日米両政府を追い詰めた成果です。 (竹下岳)県議選 参院選 「オール沖縄」と野党の勝利を
安倍政権が2014年8月に辺野古・大浦湾の海底掘削(ボーリング)調査に着手して以来、工事中止は昨年7~8月の県・政府による集中協議に伴う中止に続いて2回目です。ただ、今回は裁判所の勧告に基づく重いものであり、期間も少なくとも数カ月以上におよびます。暴走する安倍政権は昨年10月、初めて辺野古の「本体工事」に着工。工期を20年10月までとしていましたが、この工期も大きく狂うのは必至です。米太平洋軍のハリス司令官など米軍高官が相次いで、県民の抵抗による工事の遅れを指摘していましたが、これが現実味を帯びてきました。
「争点回避」の思惑
安倍政権は当初、工事中止を含む「暫定和解案」に否定的でしたが、なぜ、同案受け入れにいたったのでしょうか。
何よりも、翁長県政が日米両政府の圧力に屈せず、「新基地阻止のため、あらゆる権限を行使する」という立場を堅持していることが挙げられます。
裁判所の和解勧告文は、仮に今回の訴訟で国が勝訴しても、新基地設計変更の承認など裁判闘争が延々と続き、今後も国が「勝ち続ける保証はない」、むしろ「敗訴するリスクが高い」と指摘しています。県や名護市が行政権限を行使し続ける限り、国側は“展望”を見いだせないのです。
加えて、6月の県議選、7月の参院選への影響回避という思惑も働いたとみられます。夏ごろまで工事を中止することで辺野古新基地の争点化を避ける狙いも透けて見えます。
政府は辺野古固執
日米両政府は4日、相次いで「辺野古が(普天間基地問題解決の)唯一の解決策」だと表明し、和解が成立しても新基地推進に変わりないとしました。
翁長知事が4日の記者会見で、「大変残念な発言だ。『辺野古が唯一』などという話をするから、なかなか対話が進まないのだ」と批判しているように、日米がこの立場に固執する限り、今後も長期にわたる法廷闘争は避けられません。
また、普天間基地の「辺野古移設」に固執する限り、仮に新基地工事が中止されたとしても、普天間基地は固定化され、宜野湾市民が米軍機による騒音や墜落の恐怖にさらされる現状は変わりません。翁長知事は同日、首相官邸で菅義偉官房長官に対して「固定化は絶対に許さない」と表明しています。
新基地工事の一時的な中止から、完全な断念へと追い込むためには、今後、和解勧告に基づいて行われる国と県の協議で、新基地阻止を訴える県を後押しする世論をつくることが求められます。さらに、県議選と参院選での「オール沖縄」および野党・市民連合の勝利が決定的です。
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