参院予算委
3日の参院予算委員会で、安倍政権の暴走をただした日本共産党の小池晃副委員長。消費税増税と社会保障の切り捨てで貧困と格差を拡大する政治の転換を求めました。消費税増税
小池「消費の冷え込みは想定外ではないか」
首相「予想以上の落ち込みだ」
日本共産党の小池晃副委員長は、2014年4月の消費税率8%への増税が家計消費の深刻な落ち込みを引き起こしている問題をとりあげ、10%への増税の中止を求めました。小池氏は、政府が消費税率を5%に引き上げた前回(1997年4月)と、8%に引き上げた今回(2014年4月)の家計消費支出の推移を示し、「重大なのは、増税後の落ち込みが2年近くたっても続き、前回より低迷していることだ。消費税率8%増税に最大の原因がある」とただしました。
安倍晋三首相は「(値上げ前の)駆け込み需要も多かった」と弁明。石原伸晃経済再生相も「天候不順が大きな影響を与えた」と言い訳しました。
小池氏は、「消費税増税による大打撃とともに、アベノミクスの悪循環が起こっているということだ」と批判。大企業が史上空前の利益を上げる一方、勤労者世帯の実質世帯収入が5%低下し、年収ベースで624万円から590万円まで低下していることをあげ、「これで家計消費が上向くはずがない」と追及しました。
小池氏は、首相が「消費税はワンショットだ」と、消費落ち込みは一時的なものだという認識を示していたことに言及。「われわれは、消費税8%増税の影響はワンショットにとどまらず、日本経済の循環を悪くすると言ってきた。それが現実のものになっている」と強調しました。
「8%への増税がこれほど消費を冷え込ませるとは、想定外だったのではないか」と迫ると、首相は「予想以上に落ち込み、予想以上に長引いているのは事実だ」と認めました。
小池氏は、来年4月の消費税増税について、家計からみれば14年から17年の3年間で税率5%から10%へ増税されることと同じであることを指摘。麻生太郎財務相は、「5%から10%への増税で、国民1人当たり8万1000円、1世帯当たり18万4000円の負担増になる」と答弁しました。
小池氏は、「すさまじい額だ。1997年の増税に比べても過酷な増税になる。そうした認識があるのか」とただしました。
首相は「(97年と)どちらが過酷かは一概にお答えできない」と答えるにとどまったため、小池氏は「3年間で5%引き上げられ、1世帯当たり18万円の負担増になる。明らかに過酷になるではないか」と強調。「家計消費の(大きく落ち込んでいる)水準を一切、考慮しないのか」とたたみかけましたが、首相は「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が起きない限り消費税を引き上げていく」と答弁。小池氏は「このまま増税に突き進めば、国民の暮らしも日本経済も大変なことになる。10%増税は断じて行うべきではない」と述べました。
年金給付抑制
小池「消費税10%でも据え置き」
厚労相「仕組み上は指摘の通り」
「社会保障のための消費税増税」と言いながら、実際に何をやろうとしているのか―。小池氏は、安倍政権が今国会に提出する年金制度改定法案で、物価・賃金が上昇しても、年金の伸びをそれ以下に抑え込む「マクロ経済スライド」で実施しきれなかった抑制分を翌年度以降に繰り越し、物価上昇時にまとめて差し引く「キャリーオーバー制」を導入しようとしている問題をただしました。
これが導入されると、2017年度からの10%への消費税増税で物価が上昇するにもかかわらず、16年度の未実施分が加わって年金額が据え置かれてしまうことになります。塩崎恭久厚労相は「仕組み上の例は指摘の通りだ」と認めました。
小池氏は「社会保障のための消費税と言いながら増税分すら年金に反映されない。とんでもない」と批判。「どんどん年金が目減りすれば、受給世代の消費や内需全体が冷え込み、将来世代の賃金にも悪影響を与える」と強調しました。
“将来世代の年金資金まで失われる”として小池氏は、年金資金の株式運用拡大による運用リスク問題をただしました。
年金積立金は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が信託銀行などに委託して運用され、安倍政権になって株式運用の大幅拡大が行われました。GPIFの運用資産は137・5兆円にものぼり、世界最大の運用規模です。
小池氏の質問に塩崎恭久厚労相は、GPIFほどの巨額の公的年金資金を市場運用している国はなく、米国の「社会保障信託基金」でも「株式市場への介入で効率性を損なう」として、株式運用していないことを認めました。小池氏は「日本は年金資金をリスクにさらし、政府が市場に介入することになる」と批判しました。さらに、GPIFが株式運用の割合を倍増した14年10月末以降、海外投資家が株式を売り越せば、運用委託先の信託銀行が買い越すという正反対の動きが大半で、短期に激しい売買を繰り返していることを告発。「アベノミクスのために、年金マネーで株価を支えているのは明らかだ」と追及しました。
安倍首相は「国債は金利マイナスで、これじゃ年金の支払いはできない」と言い訳し、「政権ができてから(株式の運用益は)38兆円のプラスだ」と自画自賛しました。小池氏は「マイナス金利は自分でやった話じゃないか。天にツバする話だ」と批判。株価下落で2015年度末は運用益がマイナスになる見通しだと指摘しました。
小池氏は、株式運用拡大は「首相が『成長戦略』のために言いだしたことであり、アベノミクスを支える株価維持のために国民の老後の資産である年金資金を食いつぶすのは、許されない」と強調しました。
マクロ経済スライド 自公政権が2004年、「年金制度の持続」を理由に導入した年金の自動削減システム。年金給付額の伸びを物価・賃金の伸びよりも1%程度抑えます。ただし、物価上昇が抑制分より低い場合は上昇分だけを削減し、物価下落時は下落分だけを削減して抑制分は実施しないルールとなっています。これを見直して、未実施分を繰り越して実施できるようにしようとしています。
介護給付削減
小池「離職ゼロ」に逆行する見直し
首相・厚労相 “保険外し”否定せず
小池氏は、安倍政権が「介護離職ゼロ」をうたいながら、一方で介護保険をさらに受けにくくする見直しを検討していることを追及しました。介護保険は安倍政権で「要支援」1、2の主なサービスが保険給付から外され、地域支援事業に移行。介護サービス利用料の負担増も行われました。
さらに財務省は「要介護」1、2の訪問介護で「生活援助」を「原則自己負担」とすることを主張。「要介護」1、2は、介護保険の認定を受けた人の中で約229万人と最も多く、訪問介護の利用者は「要介護」者全体の61・3%を占めており、負担増は多くの高齢者の生活を直撃することになります。
小池氏は「在宅生活の維持が難しくなる」とする全国老人福祉施設協議会の意見書(別項)を紹介し、生活援助が要介護度を悪化させない「大きな担保になる」と強調し、生活援助を保険給付から外せば「“介護離職ゼロ”に明らかに逆行する」とただしました。
安倍晋三首相は「持続性を考えなければならない」と答弁。塩崎恭久厚労相も、小池氏が「厚労省としてはやらないということか」とただすと、「結論ありきではない。すべてを議論する」として、いずれも“保険外し”を否定しませんでした。
小池氏は、国民が介護保険料を払っているのは要介護状態になったときにサービスが受けられるという期待があるからだと指摘。介護保険制度創設にたずさわった厚労省元老健局長の堤修三氏が業界紙で「給付は保険料を支払った被保険者との約束だ」、「介護保険は『国家的詐欺』となりつつあるように思えてならない」と批判していることを突きつけ、「要介護」状態となったときに必要なサービスが受けられないことは許されないとただしました。首相は「持続性がなければサービスは続けられない」と繰り返しました。
小池氏は、財務省の社会保障制度「改革」案では、介護保険にとどまらず医療、年金、生活保護の大改悪メニューを掲げていることを提示(表)し、「こんなことをやれば日本の社会保障制度は破壊され、国民の暮らしも日本の経済も持続不可能になる。医療費や介護の費用がかさむことになり悪循環だ」と批判しました。
いずれも法案提出は17年の通常国会以後だと指摘し、「国民に痛みを押しつける社会保障の大改悪を、選挙が終わってから押しつけようということではないか」と強調。「格差と貧困を広げるような政治をこれ以上続けさせるわけにはいかない」と述べました。
全国老人福祉施設協議会の意見書(要旨)
家事援助は、単純に調理、買い物のみを行っているのではなく、ケアプランに基づき訪問介護計画で目標を掲げて実施している。食べ残しの状況から体調を観察したり、買い物の内容で認知症の症状の進行を把握したりと専門職による支援をしている。家事援助を民間サービスにゆだねると上記の支援が期待できず、在宅生活の維持が難しくなる。
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