主張

税制法案審議入り

大企業減税と庶民増税やめよ

 2016年度予算案の審議と並行して、赤字国債の発行や税制改定など歳入関連法案の衆議院での審議が始まっています。財政法に違反した赤字国債を今後5年間発行できるようにする特例公債発行延長法案は重大な中身です。税制改定法案は大企業減税を前倒しで強行し、国民には17年4月からの消費税増税を押し付ける言語道断な法案です。それぞれの法案を徹底審議するのは当然です。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の筋書きは破綻しており、とりわけ大企業減税と庶民増税は中止すべきです。

減税の恩恵大企業に集中

 大企業減税は、「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指すと公言する安倍政権のもとで繰り返されてきたもので、16年度は国税の法人税と地方税の法人事業税などの税率を合計した実効税率を、当初の予定を前倒しして20%台にまで引き下げることを狙ったものです。実効税率は15年度の32・11%が29・97%に下がります。財界・大企業は法人税減税を繰り返し要求しており、減税強行はその要求に応えたものです。

 法人税減税による減税額について安倍政権は、法人税で3340億円、法人事業税で3940億円(いずれも平年度)と試算しています。法人税は黒字の企業にしか課税されないので、減税の恩恵はほとんど大企業に独り占めされます。しかも安倍政権は、赤字企業にも法人事業税を課税する外形標準課税の見直しなどで、減税の財源を穴埋めしようとしています。大企業の減税分を赤字企業や中堅・中小企業の負担増で賄うわけで、文字通り大企業のためだけの法人税改革です。

 大企業は実効税率の引き下げで税負担を軽くしてもらうだけでなく、引当金などの優遇税制や「研究開発」などを名目にした政策減税でも潤っています。政策減税の総額は14年度1兆2000億円にのぼり、トヨタ1社の研究開発減税だけでも1080億円を超すなど、ほとんどが大企業に集中しています。巨額のもうけで潤う大企業が、払うべき税金を払っていないのはまったく不当です。

 税制改定法案には大企業減税に加え、17年4月からの消費税の10%への引き上げを強行するため、食料品などの税率は8%に据え置くなどの対策が盛り込まれています。安倍政権は「軽減税率」の導入だといいますが、一部の品目を据え置くだけでそれ以外の税率は引き上げられるため、国民にとっては1人当たり2万7000円、1世帯当たり6万2000円もの負担増になります。税率が複数になる混乱や小売業者の負担増も予想され、庶民増税を押しとおすためだけに「軽減税率」導入を持ち出した、安倍政権与党の自民・公明両党の責任は重大です。

「アベノミクス」は破綻

 安倍政権は「アベノミクス」で企業がもうけを増やせば賃上げや雇用の拡大も進み、経済の「好循環」が起きるといってきました。ところが大企業のもうけはため込みに回るだけで、賃上げも雇用増も進んでいません。実質賃金の低下で個人消費は低迷し、国内総生産(GDP)もマイナスになるなど経済運営は行き詰まっています。

 大企業減税と庶民増税の強行は、「アベノミクス」の破綻を、激しくすることにしかなりません。