主張

戦争法・志位氏質問

深刻な危険 ごまかしは通らぬ

 自衛隊が戦後初めて海外で人を殺し、戦死者を出す差し迫った危険が生まれている―。日本共産党の志位和夫委員長は衆院予算委員会の基本的質疑で、今国会の最大焦点である戦争法の問題を真正面から取り上げました。質問の大半を使い、戦争法の現実的な危険を具体的事実で浮き彫りにした追及に、安倍晋三首相らはあれこれごまかそうとしましたが、危険性は否定できません。日本の平和と国民の命を危険にさらし、世界の紛争解決にも逆行する戦争法を一刻も放置できないことは明白です。

PKOの任務が大変容

 志位委員長は質問冒頭、戦争法は「数の暴力」で成立させられたからといって、許したままにしておくことは決してできないと述べ、戦争法強行で生まれた、差し迫った重大な危険を取り上げました。

 一つは、アフリカの南スーダンでのPKO(国連平和維持活動)に派兵されている自衛隊の任務拡大です。戦争法の一つ、改定PKO法は、PKOに参加する自衛隊に「安全確保業務」「駆け付け警護」という新任務を追加するとともに、武器使用基準を拡大し、「任務遂行のための武器使用」=「業務を妨害する行為の排除」でも武器が使えることを可能にしました。安倍政権は、南スーダンPKOの自衛隊に、戦争法で拡大した任務を与えることを検討しています。

 かつては停戦合意や中立性などを大原則にしていた国連PKOの活動が大きく変容し、「住民保護」などのために武力行使が求められるPKOへ様変わりしています。南スーダンPKOでも現地の政府軍などとの武力衝突が激発していることが、直近の国連報告書からも明らかになっています。

 南スーダンPKOに武器使用任務が拡大された自衛隊が参加すれば、憲法9条が禁じる海外での武力行使そのものにつながる危険は避けられません。現地の情勢は、安倍政権が描くような「おおむね平穏」「停戦合意がある」などの生やさしい実態ではありません。現実を無視した政府の姿勢は、まったく無責任であり、重大です。

 もう一つは、過激組織ISにたいし、米国をはじめとする「有志連合」が行っている軍事作戦に、自衛隊が参加する危険です。

 戦争法の成立により、軍事作戦を支援する法律的な条件が整い、日本政府が「政策判断」すれば、対IS軍事作戦への自衛隊の後方支援は、可能になっています。安倍首相は「政策判断として」後方支援は考えていない、と繰り返しますが、理由を明らかにできません。米国から支援要請があっても「お断りする」と述べましたが、その理由も語れません。「拒否」を貫けるかどうか不確かで、ここでも危険性は明らかです。

廃止のたたかいが急務

 昨年、米国から日本政府に対IS軍事支援の協力要請があったことが報じられているのに、志位氏がいくら追及しても、中谷元・防衛相は要請があったかどうかの有無さえ答弁を拒みました。オーストラリア政府が要請の事実は認めていることと比べても、あまりに異常な対米従属姿勢です。

 平和主義と立憲主義を破壊する戦争法の危険は志位委員長の質問でいよいよ鮮明です。戦争法がもたらす危険を阻止するとともに、戦争法を廃止に追い込む世論と運動を広げることが急務です。