主張

甘利氏の閣僚辞任

説明つかず、反省・謝罪もない

　週刊誌報道などで口利き疑惑が指摘されていた甘利明経済再生相が、建設会社から政治献金を受け取っていたことなどを認め、閣僚を辞任しました。口利き疑惑そのものは未解明です。後任の経済再生相には石原伸晃元環境相が就任しました。閣僚としてはもちろん国会議員としての資格にかかわる口利き疑惑は、閣僚を辞任しただけで消えてなくなるものではありません。甘利氏の説明責任とともに、国会が関係者を呼び真相を究明することが不可欠です。

口利き疑惑は解明されず

　甘利氏が認めたのは、千葉県内の建設会社から、２０１３年１１月には大臣室で、１４年２月には神奈川県大和市内の地元事務所でそれぞれ５０万円を受け取ったことなどです。時期は遅れたもののいずれも政治献金として届け出ており、今回の疑惑発覚を機に返済することにしたといいます。

　『週刊文春』が最初に報じた疑惑は、都市再生機構（ＵＲ）とトラブルを抱えた建設会社が甘利氏の事務所に解決を依頼し、秘書が口利きした見返りに１３年８月に５００万円受け取ったほか、１４年には新たなトラブルが発生して、事務所が交渉を進めていたというものです。甘利氏への１００万円の献金を含め、建設会社が提供したのは約１２００万円とされます。

　甘利氏は秘書などが口利きしたことについては調査中として説明を尽くさず、秘書が受け取った５００万円については２００万円を政治献金として届けたが、３００万円は秘書が費消したとして、秘書の監督不足を辞任の理由の一つに挙げました。また１４年に持ち込まれた新たなトラブルについては事務所で５０万円受け取ったとき説明を受け、公設秘書に資料を届けさせたことは認めましたが、口利きだとは認めませんでした。

　甘利氏の説明は疑問だらけです。なぜ大臣室や地元事務所で面談したとき、総額１００万円もの献金を受け取ったのか。相手の素性や、献金の目的は確かめなかったのか。献金元の建設会社とは秘書や地元事務所が以前から付き合っていたといわれるのに、秘書が口利きしているのを甘利氏は本当に知らなかったのか。新たなトラブルの際、建設会社から説明を聞き、公設秘書に資料を届けさせたのは口利きのためではなかったのか―。

　ＵＲは甘利氏の記者会見の後、甘利氏の秘書と１２回面会し、うち９回は建設会社との補償交渉だったと認めました。国会議員やその秘書が国やその出資を受ける団体に職務上の行為をあっせんし、利益をえれば罪に問われます。国会議員の資格にかかわる重罪です。甘利氏が秘書の責任で済ませることは絶対に許されません。

安倍政権として重大責任

　甘利氏は第２次、第３次の安倍政権で経済再生相や環太平洋連携協定（ＴＰＰ）の交渉担当を務めた安倍首相の盟友中の盟友です。口利き疑惑が取り沙汰される期間は国民の反対を押し切った消費税増税やＴＰＰ合意の時期と重なります。政権の責任は重大です。

　甘利氏は重要政策の障害になることを辞任の理由にしましたが、国民に悪政を押しつけながら疑惑にまみれたことへの反省と国民への謝罪はないのか。後任の石原氏が「アベノミクスをしっかり完遂していく」というのも安倍政権の反省のなさを示すものです。