日本共産党の山下芳生書記局長は24日のNHK「日曜討論」で、通常国会の焦点、夏の参院選にどう臨むか、衆院選挙制度見直しなどについて各党幹部と議論しました。

甘利氏の口利き・金銭授受疑惑

閣僚・議員としての資格と首相の任命責任問われる 関係者を国会招致し解明を

 冒頭、甘利明経済再生担当相の口利き・金銭授受疑惑について、野党から「まず(甘利氏本人に)金銭授受があったかどうか明確にしていただき、国会の論戦を始めたい」(民主党の福山哲郎幹事長代理)などと事実関係を明らかにするよう求める声が相次ぎました。自民党の棚橋泰文幹事長代理は「本人は説明責任を果たすと言っている。これに尽きる」と言うだけで、逆に、「世界経済の不透明感が増しているのに、(甘利担当相の)経済演説を一部野党が退席したのは残念だ」と矛先を野党に向けました。山下氏はこう迫りました。

 山下 世界経済がこんなときとおっしゃいましたけど、こんなときに経済担当の大臣が疑惑にまみれていいのかが問われているのです。事実ならあっせん利得罪に問われることです。2回にわたって50万円を渡したという報道について、甘利さん自身が、会ったことは認めた。金銭の授受についても否定できなかった。50万円もらったかどうかを思い出せない人がいるなんてこと自体が驚きで、大臣としても国会議員としても、それだけで資格が問われると思います。それを安倍首相は、甘利さん任せで「見守りたい」と(いう態度です)。冗談じゃないですよ。(安倍政権の)主要閣僚であり、安倍首相の任命責任があるわけです。しっかりと安倍さん自身が真相究明をするべきですし、国会は関係者を招致し、与野党を超えて真相解明に当たるべきです。

アベノミクスは破綻

富裕層は潤ったが、働く人の賃金はマイナス――暮らしも経済も壊す消費税増税   

 続いて2016年度予算案がテーマになり、棚橋氏は「1億総活躍、未来にチャレンジする予算をめりはりつけてつくった。一番必要なのは強い経済をつくることだ。経済が良くなれば雇用が良くなる」と強調しました。山下氏は反論しました。

 山下 安倍政権の3年間でアベノミクスが破綻したことはもう明らかです。確かに大企業の収益は過去最高になり、ごく一握りの富裕層は株高で潤ったかもしれません。しかし、働く人の実質賃金は3年間でマイナス5%です。年収400万円だと年20万円の目減りです。雇用が増えたといいますが非正規(雇用)が増えただけです。こんなときに消費税を10%に増税したら、「軽減税率」を導入しても国民1人あたり年2万7千円の増税で、暮らしも経済も壊れます。消費税10%増税はきっぱり中止し、大企業への法人税減税のばらまき、年間5兆円を超えた軍事費のばらまきをやめ、正社員が当たり前の雇用のルールをつくって所得を増やし、景気をよくして税収を増やす道に転換すべきです。

 公明党の斉藤鉄夫幹事長代行は「地方創生、1億総活躍、GDP600兆円のビジョンが明確になった予算だ」と述べましたが、「地方や中小企業にアベノミクスの恩恵がまだまだ及んでいない」と認めざるをえませんでした。

 それに対し、「安倍政権のもとで貧困と格差が広がっている。これは非常に深刻な問題です」と強調した山下氏。貧困ライン以下で生活している人は6人に1人、一人親世帯の貧困率は50%を超えてOECD(経済協力開発機構)34カ国中で最悪、全世帯の子どもの大学進学率73%に対して生活保護世帯は同3割台で、児童養護施設の高校卒業後の場合は2割台―。これらのデータをもとに貧困が次の世代に連鎖している実態を示して、次のように強調しました。

消費税は上げれば上げるほど貧困と格差が広がる きっぱり中止を

 山下 これは与野党を超えて解決しなければならない問題です。消費税というのは、所得の低い人ほど負担が重くのしかかる究極の不公平税制ですから、消費税を上げれば上げるほど貧困と格差が広がります。(10%への増税を)中止して別の道を歩むべきです。

 自民党の棚橋氏も「山下さんからのお話、とくに貧困の問題は真摯(しんし)に考えていかねばならない」と応ぜざるを得ませんでした。

参院選の争点

安倍内閣は戦争法で9条を解釈で壊し、明文改憲まで狙う――戦争法廃止へ論戦強める

 次に、7月の参院選での争点が問われ、安倍首相が改憲を発議できる3分の2の議席を改憲勢力で占めたいと発言したことも紹介されました。棚橋氏が「自主憲法制定が立党の精神。改憲へ議論を深めたい」と語ったのに対し、民主党の福山氏は「安保法制(戦争法)を元最高裁長官が違憲と言ったのに昨年強行し、10万人以上の国民が何度も国会前に(反対行動で)来たのに切り捨てた姿勢を正すべきだ」と批判。「安倍政権のもとでの憲法改正はありえない」と語りました。山下氏はこう強調しました。

 山下 安倍政権は、すでに戦争法の強行で憲法9条を解釈で壊したんです。そのうえ、今度は毒を食らわば皿までだと、明文で変えようとしている。国民のみなさんと一緒にこれを阻止するために頑張りたい。

 戦争法の強行で、戦後初めて自衛隊が海外で殺し殺される現実的危険が生まれています。PKO(国連平和維持活動)の南スーダンの部隊に「駆け付け警護」が加えられようとしていますが、事実上停戦合意が崩れて、政府軍・反政府軍が住民・兵士の区別なく戦闘をしています。12歳から17歳までの子どもたちが少年兵として駆り出されていて、自衛隊員の銃口が住民や子どもたちに向けられることになる。どの子も殺させないと、ママの会のみなさんが心配していますが、その現実的危険があります。あるいは(過激組織)ISに対する空爆への軍事支援をアメリカから要請されたら断れるのか。菅官房長官に(国会で)8回聞きましたが、断るとは言えない。ここでもまた日本が憎しみの連鎖を広げ、テロの脅威に日本国民がさらされる危険がありますから、戦争法は廃止するしかないという論戦を強めたい。

 これに対し、棚橋氏は「違憲かどうかは現在の最高裁長官が判断することだ」、斉藤氏は「戦争防止法案だ」などと弁明しました。

野党共闘

国民の熱望に応え、立場の違い超え力を合わせたい   

 参院選での野党共闘に話が移り、司会者は「共産党は野党の候補者一本化に熱心なようですね」と問いかけました。山下氏は「共産党が熱心というよりも、国民のみなさんの側から熱望されていることだと思います」と応じ、こう語りました。

 山下 どんなに多数を持っている政権党であっても、憲法の枠内で政治をすることが託されているわけで、それを勝手に歴代(政権)の解釈をねじ曲げて(戦争法を)強行したんです。これは、あれこれの政策とは次元の違う問題です。戦争法を強行した安倍政権は倒してほしい、そのために野党は力を合わせてほしいということなので、その一点で、いろいろな立場の違いを超えて力を合わせようと私たちは呼びかけています。熊本県では、すべての野党が力を合わせて共同候補を擁立することができました。これを全国に広げたいです。

 民主党の福山氏は「公開討論会で決めるとか、透明性のある形で一本化していかないと(与党から)談合だ、野合だと言われる。そのことに留意しながら、勝てる候補者をみんなで応援する態勢をつくりたい」と述べ、社民党の又市征治幹事長は「安倍政権に歯止めをかけようという政党が32の1人区で何としても候補者の一本化を図る努力を全力でやるのが国民への責任だ。汗を流していきたい」と語りました。

衆院定数の削減

切られるのは国民の声――民意と議席が乖離する小選挙区制こそ見直すべきだ

 最後に、衆院定数の10減を示した衆院議長の諮問機関の答申(14日)について議論しました。自民党は「真摯に議論し、早期に結論を出したい」と述べ、民主は「受け入れる方向だ」、公明は「尊重する」と述べました。おおさか維新の会の馬場伸幸幹事長は大阪府議会での定数削減を「実績だ」と誇って見せました。山下氏は「定数削減は反対だ」と強調しました。

 山下 「身を切る」と言いますが、切られるのは国民の声です。国会は政府の暴走をチェックする(のが役割なのに)、そのチェックが弱まるということです。選挙制度でいうと一番問題なのは小選挙区制であり、虚構の多数がつくられ、民意と議席が乖離(かいり)しています。いまの安倍政権も、全有権者で(自民党は)17%の支持しかないのに多数になり、憲法違反の戦争法を強行しました。この選挙制度を抜本的に見直すべきです。