主張
スキーバス事故
人命優先の規制強化こそ急げ
乗客乗員15人が死亡し26人が重軽傷となった長野県軽井沢町のスキーツアーバス事故で、事故を起こしたバス運行会社や旅行会社の法令違反やずさんな業務実態などが次々と明らかになっています。なぜここまで事態が放置されてきたのか、怒りを禁じ得ません。政府は、深刻なバス事故が起こるたびに「再発防止」策をとるとしてきたのに、なぜ今回の惨事を防げなかったのか。安全置き去りの大本にメスを入れ、悲劇を繰り返さない措置をとることが急務です。
構造的問題が放置され
多くの若者たちの未来を突然奪った今回の事故は、大型バスがひとたび事故を起こせばどれほど悲惨な事態に直結するかを改めて見せつけました。なぜ大型バスに不慣れな運転手がハンドルを握らされたのか。なぜ予定ルートを通らずに難度の高いカーブの多い道を運転したのか。再発防止のためにも徹底究明が急がれます。
国土交通省の特別監査や警察の捜査などを通じて明らかになってきたのは、人命をあずかる交通機関として安全を担っていることへの責任や自覚を欠いたバス運行会社とツアーを企画した旅行会社のあまりにずさんな姿勢です。
事故を起こしたバス会社は運転手13人のうち10人が健康診断をしていなかったことなどで事故直前に行政処分を受けていました。今回も運転手の健康チェックのための点呼もしていません。時間外労働についての労使協定も結ばない違法な実態も判明しました。
バス会社と旅行会社は、国が安全を確保する基準として定めた運賃下限を大きく下回る金額で契約していました。明らかな法律違反です。「激安」「格安」を売り物にした旅行会社が、バス会社に低運賃を押し付けた疑いが濃厚です。
深刻なのは、貸し切りバス業界のなかで安全置き去りの事業者が後を絶たず、構造的な問題になっていることです。引き金は、自民・公明政権の「規制緩和」路線にもとづき2000年に行われた道路運送法改定です。バス事業への参入要件を免許制から許可制に緩めた結果、事業者数は約2300から約4500へ急増しました。それが受注競争を激化させ、異常な値引き競争を引き起こしたのです。
コスト削減のため運転手に低賃金と長時間労働が押し付けられ、健康被害も進みました。27人が死傷した07年の大阪府吹田市のスキーバス事故、45人が死傷した12年の群馬県内の関越道のツアーバス事故などは、運転手の無理な働かせ方による過労が原因でした。
国交省などは事故のたび、長距離運行では運転手を2人体制にするなど「再発防止」策をとってきましたが、後手に回ったうえ参入規制など問題の大本に手を着けてきていません。関越道事故後も過労運転による事故は発生していました。現場の労働者からは、深刻な危険が繰り返し指摘されていたにもかかわらず、事態を放置してきた政府の責任は免れません。
事後チェックは限界
バス、タクシー、トラックなどで12万以上の事業者にたいし国交省の監査職員は約370人です。業者の事後チェックに限界があるのは明らかです。問題ある業者を参入させない規制を強めることが、待ったなしです。悲惨な事故を繰り返さないため「規制緩和」を根本から見直すことが必要です。
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