主張

個人消費の低迷

政治の抜本的対策が不可欠だ

 一年でもっとも街がにぎわう年の瀬だというのに、消費がいま一つ盛り上がりを欠いているといわれます。暖冬で冬物衣料などの売れ行きが伸び悩んでいるだけではありません。昨年4月からの消費税増税の影響が残るうえに、2017年4月からの消費税再増税への警戒感もくすぶり、円安による食料品価格などの値上がりや依然鈍い賃金の引き上げも、消費の足を引っ張っているからです。国内総生産(GDP)で6割を占める消費が低迷したままでは景気はよくなりません。消費低迷の打破へ、消費税の増税中止など政治が抜本的な対策をとるべきです。

消費支出は3カ月連続減

 総務省が先週末発表した11月の家計調査報告(2人以上の世帯)によると、家計の消費支出は名目で前年同月比2・5%減少、物価上昇分を差し引いた実質でも2・9%の減少と、11月まで3カ月連続で前年を下回っています。消費支出は昨年4月の消費税の増税のあと今年3月まで1年間前年を下回り、その後一進一退を続けていましたが、9月以降明らかに減少に転じました。消費税増税の影響から立ち直れないうちに、消費に慎重な家計の節約志向の高まりの影響を受けたのは明らかです。

 費目別で見ても、外食など食料費や被服・履物、交通・通信、教養・娯楽など軒並みマイナスです。交際費や4月に軽自動車税が増税された自動車関係費などの落ち込みが目立ちます。

 円安による食料品などの価格上昇とともに消費に深刻な影響を及ぼしているとみられるのは、収入の伸び悩みです。同じ家計調査で勤労者世帯の収入の推移をみると、世帯単位の11月の実収入は名目で1・4%、実質で1・8%のそれぞれ減少です。実収入は3カ月連続の実質減少、世帯主の収入だけでは4カ月連続の実質減少です。大企業は大もうけしていても賃上げの動きは鈍く、そのため収入が落ち込み、消費の足を引っ張っているのは明らかです。

 安倍晋三政権は「アベノミクス」と呼ぶ経済政策で経済の「好循環」が始まっており、賃金も雇用も改善しているようにいいます。しかし、実際には大企業の大もうけはため込みに回り、賃金などにはほとんど回っていません。「改善」したという雇用も増えているのは賃金の安い非正規の労働者が多いので、全体としての収入の改善は微々たるものです。大企業のもうけを賃上げや安定した雇用拡大に回させる対策が不可欠です。

 勤労者世帯の収支でみて、世帯主の収入は減り続けている半面、配偶者の収入は8カ月連続の実質増加となっていますが、その平均はわずか5万7099円です。これでは世帯主の賃金が抑えられている分、配偶者が働いて多少埋め合わせているぐらいで、安定した雇用と賃金とはいえません。

消費税の再増税は中止を

 見過ごせないのは、収入が伸び悩む中、消費税の立て続けの増税が国民の消費意欲を冷やしていることです。最近のNHKの世論調査でも、再来年4月からの消費税増税に「反対」が43%と「賛成」の28%を大きく上回りました(「どちらともいえない」が27%)。国民の増税への不安は深刻です。

 国民の消費を喚起するために、政府がまずやるべきことは消費税の増税中止なのは明らかです。