主張
失政アベノミクス
家計応援する政治への転換を
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が行き詰まりを深めています。大胆な金融緩和と機動的な財政出動、規制緩和など成長政策の「3本の矢」で経済を再生すると掲げてきたのに、政権発足から3年近くたっても経済は一進一退を続け、国民の消費や企業の投資も盛り上がってきません。金融緩和の先頭に立ってきた日本銀行は先週、2%の消費者物価上昇目標の達成を先延ばししました。安倍首相も失政に口をつぐんで、これからは「新3本の矢」を目指すと目先を変え始めました。失敗したアベノミクスをやめ、暮らしを応援する政策への転換が急務です。
トリクルダウンの破綻
安倍政権の経済政策の特徴は、金融緩和や財政出動など「3本の矢」で円安を進め、株価を上げれば、企業の利益が増え、回りまわって国民の収入や消費も増えるというものです。円安や株高は進み、大企業を中心に企業の利益は記録的な水準に積み上がっていますが、そのほとんどは内部留保に回って、勤労者の収入や消費は増えていません。有効求人倍率の上昇など雇用は増え始めたといっても、大半は賃金の安い非正規の労働者で、正社員の雇用増には至っていません。「トリクルダウン」(したたり落ち)の破綻です。
総務省が発表した9月の家計調査報告では、勤労者世帯の実収入は1年前に比べ物価上昇分を差し引いた実質で1・6%減少し、すべての世帯でみた消費支出は前年同月比で0・4%、前月比で1・3%の減少となりました。大企業がもうけても家計に回らず、肝心の消費が落ち込んでいるのでは経済の立て直しなど不可能です。
日本経済全体の動きを示す国民所得統計で見ても、国内総生産(GDP)は昨年4月の消費税増税のあと2四半期連続落ち込みを続け、昨年後半にはプラスになったものの今年4~6月期には再び3期ぶりにマイナスになり、まもなく発表される7~9月期にも不安が高まっています。アベノミクスの行き詰まりは明らかです。
こうしたなか、日銀は「消費者物価2%上昇目標」の達成を「16年度後半」に再延期しました。黒田東(はる)彦(ひこ)日銀総裁は、原油価格の大幅下落などがあったためで、金融緩和で物価を引き上げるという政策は間違っていないといいます。しかし、金融緩和で物価を上げれば、企業や消費者がインフレを予想し、賃金が上がり消費も増えるなどというシナリオは、全くの夢物語です。国民は物価が上がっても収入は増えず、消費を増やすどころかますます暮らしを悪化させています。間違った政策は延期ではなく根本から改めるべきです。
大企業の懐を温めただけ
マスメディアではあまり注目されませんでしたが、先月半ばの経済財政諮問会議に麻生太郎財務相が一つの資料を提出しました。安倍政権発足前の2012年度に比べ14年度までに大企業の経常利益は16・1兆円増えているが、設備投資は5・1兆円、従業員の給与や賞与は0・3兆円しか増えておらず、一方企業の内部留保は49・9兆円、手持ちの現金・預金だけでも20・2兆円増えているというのです。大企業の懐だけを豊かにする政策は今や有害です。
行き詰まったアベノミクスをやめさせ、家計と中小企業を応援する経済政策を実現すべきです。
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