主張

「辺野古」取り消し

「沖縄の心」体した知事の決断

 沖縄の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に代わる名護市辺野古への新基地建設問題で、翁長雄志知事が、仲井真弘多前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消すため、手続きを開始したことを明らかにしました。新基地建設工事を一時中断して行われていた集中協議で、安倍晋三政権が、県側の訴えに全く耳を貸さず、工事再開を強行したのを受けての措置です。「沖縄県民の心」を体して「ありとあらゆる手段を講じて辺野古に基地を造らせない第一歩」(翁長知事)です。

政府は何の反論もできず

 仲井真前知事が一昨年末に行った辺野古沿岸部の埋め立て承認をめぐっては、昨年11月の知事選で「新基地建設阻止」の公約を掲げ、圧勝した翁長知事の下に第三者委員会が設置され、「(埋め立て承認には)法的瑕疵(かし)がある」と結論付けた報告書を7月にまとめました。これを受けて翁長知事は埋め立て承認を取り消す意向を示し、追い詰められた政府は、工事を8月10日から1カ月間中断し、沖縄県との集中協議を行ってきました。

 集中協議で改めて浮き彫りになったのは、辺野古への新基地建設を「唯一の解決策」とする安倍政権の主張の不当性です。

 翁長知事は普天間基地の問題について、米軍が沖縄戦のさなかに住民の土地を強制接収し、建設したのが原点だと訴えました。沖縄県民の土地を奪って造った基地が「世界一危険」になったからといって、県民に新たな基地を差し出せと迫る日米両政府の理不尽さは明らかです。

 政府は、米海兵隊が沖縄に駐留する必要性として、「機動性」や「一体性」を強調します。しかし、翁長知事は、海兵隊部隊を輸送する強襲揚陸艦は佐世保基地(長崎県)が母港で、戦闘機も岩国基地(山口県)に配備されており、沖縄の海兵隊には機動性も一体性も欠けている事実を指摘しました。

 翁長知事の訴えに対して、政府は19年前の普天間基地「移設」の日米合意を持ち出すだけで何の反論もできませんでした。辺野古の新基地建設に一切、道理がないことを自ら証明しています。

 集中協議の「決裂」を受け、即座に政府が工事の再開を強行したのは、沖縄の声に「聞く耳を持たず、感受性もない」(翁長知事)ことを示すものです。

 翁長知事は、防衛省沖縄防衛局への通知で、▽辺野古での建設には実質的な根拠が乏しい▽埋め立てがされれば貴重な自然の回復はほぼ不可能であり、航空機騒音の増大は住民に大きな被害を与える▽全国の米軍専用基地面積の73・8%を抱える沖縄の過重負担の固定化につながる―ことなどを挙げました。翁長知事が「(埋め立て)承認に取り消しうべき瑕疵がある」と判断したのは当然です。

全国でたたかいさらに

 安倍首相は、翁長知事の埋め立て承認の取り消し表明を受け、直ちに辺野古への新基地建設を「進めていく」と語りました。翁長知事は、こうした安倍政権の民意無視の強権姿勢を、沖縄での米軍占領下の土地強奪になぞらえ、「海上での銃剣とブルドーザー」による基地建設だと批判しました。

 新基地建設の強行をストップさせるため、たたかいと世論を日本全国で一層大きく広げていくことが何より必要です。