政権に責任
「私が言葉を尽くしても聞く耳をもたず、感受性もない」―。翁長氏は同日の会見で、承認取り消しを判断した理由を、こう語りました。
翁長氏は昨年11月の知事選で、埋め立て承認の「取り消し・撤回」を含む「あらゆる手段」で新基地を阻止すると公約。県民を裏切って埋め立て承認に踏み切った仲井真氏に約10万票の大差をつけて圧勝しました。昨年1月の名護市長選、12月の総選挙など、一連の選挙で「新基地ノー」の民意はこれ以上ない形で示されました。
知事就任後の翁長氏は、自ら行使できる権限を検討すると同時に、県民の思いを伝えるべく、政府との対話を模索。辺野古の工事一時停止・集中協議期間(8月10日~9月9日)も実現してきました。
県側は5回にわたる集中協議で、米軍による民有地の強制収用で成り立った沖縄の基地形成の歴史や、政府が辺野古新基地の口実として持ち出している在沖縄米海兵隊=「抑止力」論などのまやかしを挙げ、埋め立て承認の大前提である「新基地の必要性」そのものに合理性がないことを説明してきました。
しかし、「政府側の言葉はほとんど少なく、考えを取り入れるものは見えてこなかった」(翁長氏)といいます。7日の集中協議最終回で、「工事を再開するのか」という翁長氏の問いに、政府側は「そのつもりだ」と応じました。県民の思いに一切寄り添おうとしない政府の姿勢を見せ付けられた翁長氏は、「取り消しの決意を固めた」と明かしました。
公有水面埋立法(別項)に基づく埋め立て承認が取り消された例は、過去にありません。国と県の対立が決定的になった責任はすべて、民意を無視して新基地を押し付けてきた安倍政権にあります。
法的に正当
菅義偉官房長官は14日の会見で、埋め立て承認に「法的な瑕疵はない」と強弁しましたが、取り消しは法的に正当であり、当然の決断です。
そもそも、仲井真前知事は「(普天間基地の)辺野古移設は不可能」だと公約し、辺野古埋め立てに伴う「環境保全は不可能」だと結論づけていました。それにもかかわらず、安倍政権の圧力を受け、最終段階で「環境保全措置が取られている」などと結論を百八十度ねじ曲げたのです。
翁長県政が任命した県の第三者委員会が、前県政の埋め立て承認に「法的な瑕疵」があると結論づけた(7月16日付報告書)のは当然です。
翁長県政の決断を全国で支え、想定される法廷闘争の勝利に向けた世論を広げていくことが求められます。(竹下岳)
公有水面埋立法 河川や海域などの埋め立てや干拓に関する法律で、都道府県知事の免許を要件にしています。同法4条1項では、(1)国土利用上適正・合理的であること(2)環境保全に十分配慮していること―など6要件をあげ、これらに反した場合、知事は埋め立ての「免許を為(な)すことを得ず」としています。県の第三者委員会は、この条項に照らし合わせ、辺野古埋め立てには「法的な瑕疵(かし)」があると結論づけました。
沖縄・辺野古新基地をめぐる経緯
2012年1月 政府が環境影響評価書を提出
2月 仲井真知事「環境保全は不可能」との意見書提出
2013年
3月 政府が埋め立て承認を申請
12月 仲井真知事が埋め立てを承認
2014年
7月 政府が工事強行を閣議決定
11月 県知事選で翁長氏が圧勝
2015年
7月 県の第三者委員会「埋め立ては法的な瑕疵(かし)」
8~9月 工事一時停止、政府と県が集中協議
9月 翁長知事が埋め立て承認の取り消し表明
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