主張

労働者派遣法改悪

ボロボロの法案廃案しかない

 企業が派遣労働者を受け入れることができる業務ごとの「原則1年最長3年」の期間制限を廃止し、人さえかえればいつまでも派遣労働者を受け入れることができる労働者派遣法改悪案の審議が大詰めを迎えています。法案には「9月1日」から施行することが書き込まれており、施行期日を過ぎても法案が成立していないこと自体異常です。安倍晋三政権は派遣労働者の正社員化に道を開くなどと主張してきましたが、ごまかしは完全に破綻しています。審議日程も法案の中身もボロボロになった法案は成立を強行するのではなく、廃案にするしかありません。

「みなし」規定の発動前に

 労働者派遣法改悪案はもともと昨年の通常国会と臨時国会に提出され、いずれも廃案になったものです。2回も廃案になった法案をほとんどそのまま提出し、法案に書き込まれた施行期日が過ぎても審議が続いているのは、派遣法改悪に大義がないことを浮き彫りにするものです。自民党は施行期日を月末に変更する「修正」案を提出するといいますが、たとえ会期末までに成立しても施行までにほとんど時間がないことになり、法律の周知や政省令などの準備も間に合わないことになるむちゃくちゃな審議日程です。

 安倍政権と与党がなんとしても法案を成立させ9月中に施行しようとしているのは、10月1日から違法な派遣に対しては派遣先が労働者に雇用契約を申し込んだものとみなす「みなし」規定が適用されるのを免れるためです。今回の法案に盛り込まれた業務ごとの期間制限や派遣期間の制限のない専門的な「26業務」が廃止されれば、違法な派遣が規制されることもなくなります。安倍政権が、なんとしても「みなし」規定が実施される前に改悪派遣法の施行をと狙ってきたのはそのためです。

 本来「みなし」規定は3年前に成立しており、改悪派遣法が施行される以前に派遣契約を結び、違法派遣で働かせられてきた人は「みなし」規定が適用されるはずだった権利が守られるべきですが、厚生労働省は期間制限違反の場合の「みなし」規定は適用しないといっています。派遣法改悪案が派遣労働者を守るどころか、違法派遣を繰り返す、悪質な派遣会社を守るためであることは明白です。

 安倍政権が派遣法「改正」は派遣労働者のためだといってきた口実は完全に崩れています。期間制限がなくなり人さえかえれば同じ業務でいつまでも派遣労働者を使えるようになるのは、派遣は「臨時的一時的」という大原則を根本から破壊するものです。派遣の受け入れを延長する場合、派遣先企業は、職場で多数派の労働組合に説明するだけで歯止めがありません。正社員化に道を開くというのも、ただ企業に「要請」するだけで、なんの保証もありません。まさに派遣労働者にとって、百害あって一利なしの法案です。

派遣労働者の7割が反対

 派遣法改悪案がどんなに時間をかけても成立していないのは、派遣労働者をはじめ国民が改悪を望んでいないからです。日本経済新聞などの最近の調査でも、派遣労働者の67・5%が「反対」「どちらかといえば反対」と答えています。

 国民が望まない改悪案は廃案にし、10月1日からは予定通り「みなし」規定を発動すべきです。