参院厚生労働委員会で審議中の労働者派遣法改悪案は、施行日とした9月1日を過ぎても成立しておらず、与党が同日の理事会で9月30日に施行日を修正したいと表明する異例の事態になっています。与党は戦争法案の採決をめぐり紛糾する前に成立させたい考えですが、審議も法案もボロボロになっており、廃案しかないことが浮き彫りとなっています。

 改悪案が仮に成立しても、41項目もの政省令改正案を労働政策審議会で審議しなければならず、1カ月程度が必要です。さらに国民に十分な周知をしなければなりません。

 周知期間は、派遣法制定のときは約1年、1999年の原則自由化では約5カ月、前回改正(2012年)でも約6カ月ありました。ところが今回はほとんどなく、まともに施行できる条件はありません。

 なぜそんなに急ぐのか。自民党は「みなし制度が10月1日に施行されるので、この問題を解決するためだ」と言明しています。

 「みなし制度」とは、違法派遣があれば、派遣先が派遣労働者に労働契約を申し込んだものとみなして直接雇用させる制度。これが10月に施行されるため、その前に同制度を骨抜きにする改悪案を成立させたいというのです。

 「みなし制度」が適用されるのは、(1)禁止業務(2)無許可・無届けの派遣(3)派遣可能期間の違反(4)偽装請負―の四つ。このうち大半を占めるのが「派遣可能期間の違反」です。

 ところが、今回の派遣法改悪案では、どんな業務であっても「派遣可能期間」はいくらでも延長できるため、「派遣可能期間の違反」は生じません。

 しかも、改悪案施行前に違法派遣があっても、「みなし制度」は未施行だから適用されないという身勝手な解釈を厚労省が示しています。

 「みなし制度」は骨抜きにされ、違法派遣は免罪される―派遣元・派遣先企業にとって、こんな都合のいい法案はありません。

 1日の参院厚労委員会で日本共産党の小池晃議員は「みなし雇用の権利を得ている労働者の権利を施行直前に奪うことは許されない」と批判。「労働者の権利を奪い、骨の髄まで企業サイドの要求に応えたものだ。廃案にするしかない」と求めました。